2010 Fiscal Year Annual Research Report
ジェームズ・ギブソンの視覚論と二十世紀アメリカの視覚文化
Project/Area Number |
21520131
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
榑沼 範久 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (20313166)
|
Keywords | 視覚 / 視覚文化 / 建築 / 生態学 / 二十世紀 / アメリカ / 表象文化 / 心理学 |
Research Abstract |
平成22年度はとりわけ、ジェームズ・ギブソンの視覚論から建築にアプローチする仕事を深め、「画像の生態学」を「建築の生態学」に統合する新しい方向性を見出すことができた。ギブソンの視覚論と建築の関係はこれまでも示唆されてきたが、歴史的資料を活用しながら、具体的・理論的に展開させた研究は、世界的にみても本研究が初めてのものになる。すでにこの成果は、二本の論文に結実させた。まず論文「知覚と生4-建築の生態学(1)」では、ギブソンが最晩年に「ソーク生物学研究所」(ルイス・カーン設計)に滞在していた事実も下敷きにしながら、ギブソンの「アフォーダンス理論」や「生態光学」とカーンの建築・建築理論(とくに「利用可能性」と「場所」の概念)に共通する思考を引き出した。そして論文「生態学的建築をめざして-建築とギブソンの生態学-」では、ギブソンの生態学における環境の概念を理解することからはじめ、建築を自然史のプロセスとしてとらえなおすことに行き着いた。また、ギブソンの「アフォーダンス理論」を発展させながら、自然史のプロセスとしての建築がめざすべき課題を提示し、それを建築家ルイス・バラガンの建築(「ルイス・バラガン邸」、「カプチーナス修道院」、「サン・クリストバル厩舎」、「ヒラルディ邸」)と遭遇させながら、機能主義的建築を超えた生態学的建築の本性を描き出した。この二本の論文は、私たちの視覚や行動の営みが、どのように建築の要素と接合していくのかを明らかにしつつ、私たちが環境について、どのような認識と行動の誤りを訂正できず、現在の文明史的危機に至ってしまったのかを問いかけることになった。
|