2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジェームズ・ギブソンの視覚論と二十世紀アメリカの視覚文化
Project/Area Number |
21520131
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
榑沼 範久 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (20313166)
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Keywords | 視覚 / 視覚文化 / 建築 / 生態学 / 二十世 / アメリカ / 表象文化 / 心理学 |
Research Abstract |
平成23年度はまず昨年度に引き続き、ジェームズ・ギブソンの視覚論を20世紀の建築経験(知覚-行為系の経験)に結びつける研究を展開させた。昨年度の論文「知覚と生4-建築の生態学(1)」ではルイス・カーン設計の建築(特に「ソーク生物学研究所」)の分析を中止に置いたが、今年度の論文「生態学的建築をめざして-建築とギブソンの生態学」では、「ソーク生物学研究所」中庭の設計をカーンに助言したルイス・バラガン設計の建築(特に「ルイス・バラガン邸」「サン・クリストバル厩舎」)の分析を、ギブソン的に行うことによって、機能主義的建築を超えた生態学的建築の本性を描き出した。この一連の研究は、世界的に見ても類例のないギブソン論・建築論と思われるが、それ以上に、論文「生態学的建築をめざして」は雑誌『思想』の「建築家の思想」特集に掲載されたことによって、東日本大震災を契機に議論の焦点になった文明及び建築・都市の問題に一石を投じるものになった。そして、この抜き差しならぬ問題は、ギブソン生態学への視座を拡張する必要性を本研究者に突きつけ、論考「<天災は忘れない頃にやって来る>あるいは、<災禍は忘れることができない>」において、地球物理学者・寺田寅彦の随筆を批判的に読解する仕事を行うことにもなった。また、同時に本研究の視座を活用しながら、建築家の平田晃久、藤本壮介、石上純也の各氏と公開で対談を行っては20世紀以後の建築思考を深化させ、イサム・ノグチが最晩年に手掛けたモエレ公園に旅しては、20世紀「アースワークス」を再考する契機とし、ジェームズ・タレル設計の《光の館》を長時間観察しては、20世紀美術の知覚体験のひとつの極限事象に向かうことになった。これらの研究成果は未公開のものを含むが、現在、編集協力をしている『SITE ZERO/ZERO SITE』建築特集号(2012年の秋に刊行予定)などに順次発表していく予定である。
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