2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60191813)
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Keywords | 源実朝 / 金槐和歌集 / 新古今和歌集 / 藤原定家 |
Research Abstract |
本研究は、中世前期の和歌を、東西交流という視点から考察することを目指している。具体的には今年度の計画として、1)『金槐和歌集』の文献学的研究、2)『金槐和歌集』の注釈的研究、3)『新古今和歌集』の文献学的研究、4)新古今歌人の本歌取りの方法の分析の4点を中心とした実施計画を立てた。1)に関してのみ、東北大震災の影響で予定した調査の実施が遅れ、予算執行を2か月次年度に繰り越すこととなったが、その他は順調に計画を実施した。2)に関しては、『金槐和歌集』の中でももっとも個性的で関心の集中している雑部の注釈を進め、当該部に関しては、ほぼこれを終了した。3)に関しては、国文学研究資料館の所蔵資料を活用するほか、広島市などへ出張し、資料収集を行った。これと並行し、中世和歌研究者6名とともに『新古今和歌集』の輪読研究会を定期的に行った。これは、新古今集の一首一首の表現を微細に読み解くことを通じて、同集の文献学的な研究の意義も最大限に発揮されるとの考えに基づいている。文献学的研究と注釈研究との関係は複雑であり、一朝一夕に解決がつくものではなく、いまだ全体像の解明までには至らないが、従来の研究史を進める新しい成果を上げつつある。また、これらの成果を取り入れつつ、12世紀の和歌の場として重要な意味をもち、新古今集の形成にも大きな意味を持った鳥羽殿について、記憶としての鳥羽殿--和歌の視点から-」の論文を発表した。4)についても、3)と関連しつつ、とくに新古今歌人の中心である藤原定家の本歌取りの方法について、調査と考察を進めた。その成果の一部を、論文「藤原定家の方法」として公刊した。
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