2010 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦期リベラル文化の再検討ー冷戦言説が隠蔽するイデオロギーと文化言説
Project/Area Number |
21520242
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
越智 博美 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (90251727)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 玲一 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 教授 (70262920)
|
Keywords | 冷戦 / リベラリズム / 知識人 / モダニズム文学 / 生政治 / 新批評 / 文化政策 / 新自由主義 |
Research Abstract |
基本的に予定通りに進めた。三浦・越智、共同部分としては言語社会研究科のトランス・アトランティック・モダニズムプロジェクトと共催で6月にミネソタ大学のJani Scanduraを招聘し、シンポジウムを開いた他、同プロジェクト『言語社会』の特集で他の二人と共に対談を出している(対談のため業績には記載しなかった)他、月一度の冷戦期文学の読書会を引続き行い、学内外の研究者と意見交換をした。 越智はこれまでの成果を一旦日本英文学会の特別シンポジウムにて「農本主義者のリベラル・ナラティヴ」として発表し、またとりわけ南部農本主義者がファシストと同一視される過程に焦点を当てて「アメリカの白いヨーロッパ」を執筆した。農本主義者の非政治性について、現在論文を執筆中である。これらは、冷戦研究の中で、戦後になって1920年代のハイモダニズムが評価される現象の出発点を見定める研究として意義がある。 三浦は、50年代の冷戦リベラリズム文化の研究をまとめ、"The Cold-War Literature of Freedom and Re-Conception of Race"と「合衆国が個人主義の国になったとき女はどうなるのか」として発表した。前者は、50年代のアメリカ小説の潮流をまとめながら、そこにおける政治意識と人種概念の変化を、主にRichard WrightのThe Outsiderを分析しながらまとめたもの、後者は、この時期に興隆を極めた西部劇映画について、とりわけ古典と目される『シェーン』と『真昼の決闘』を題材としながら論じ、そこに現代まで続くアイデンティティ概念の萌芽を見たものである。また、これらを踏まえながら、Nagoya American Studies Summer Semnarにおいて、J.D.SalingerのThe Catcher in the Ryeを、冷戦リベラリズムの文脈から読み解く発表を行い、その成果を「50年代アメリカのモダニズムと帝国主義」として公開した。
|
Research Products
(10 results)