2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520247
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前川 玲子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30190292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若島 正 京都大学, 文学研究科, 教授 (10175060)
加藤 幹郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60185874)
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Keywords | 亡命知識人 / アメリカ知識人 / ウラジーミル・ナボコフ / 映画学 / 越境 / 戦後アメリカ / 冷戦 / 亡命作家 |
Research Abstract |
本研究は、1930年代に亡命者としてアメリカに渡ったヨーロッパ系知識人たちが、第二次世界大戦後に独自の学問研究および創作活動を行っていく過程を検証するものである。言語、文化、学問領域の越境と相互浸透の過程のなかで異種混淆的で斬新な思考スタイルや言語空間が創出されていく経過とその背景を、思想、文学、映画という三つの側面から分析した。 研究代表者の前川は、マサチューセッツ大学歴史学教授のDarwin Stapleton氏を招聘して「越境と相互浸透-多文化社会アメリカの歴史的背景と現状」をテーマにしたワークショップを開催した。"An Ambivalent New Home : the United States and Refugee Scholars, 1933-1950"という題の講演があり、学内外の研究者が参加して活発な討論がなされた。さらに、神学者・哲学者のパウル・ティリッヒがニューヨークの亡命知識人コミュニティで演じた役割を、ハーバード大学所蔵の資料を基に分析し、その成果は2点の論文にまとめられた。文学の分野では、亡命ロシア人作家ナボコフの研究を一貫して行ってきた分担研究者の若島が、2010年に京都で行われたナボコフ国際学会の報告書を英文の共編著としてまとめ、またナボコフの遺作『ローラのオリジナル』については、論文をフランスの批評誌に発表した。さらに、この遺作の本邦初の翻訳を、長い解題を付して作品社から発表した。さらに映画学の分野では、分担研究者の加藤が、英国、ドイツからの第二次世界大戦前の亡命映画人および19世紀末のユダヤ系移民の末裔からなるハリウッド映画史上最も突出した映画作家たちの芸術作品をとりあげ、社会文化的消費財としての映画のアメリカ文化・社会のコンテクストを踏まえて、多孔質的テクスト分析を行った。これによって、アメリカの巨大地場産業としての映画産業が芸術とイデオロギーにいかに貢献したかを解明した。
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Research Products
(6 results)