2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世フランス文学における自己言及性の諸様態とその射程
Project/Area Number |
21520336
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石川 知広 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (50145645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 康明 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70168897)
小川 定義 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (40268967)
藤原 真実 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10244401)
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Keywords | 仏文学 / 仏語 / 自己言及性 / 近世 |
Research Abstract |
モラリスト的視点に本質的に内包される自己言及性とその矛盾について、『パンセ』における人間洞察の複数階層性とそれらの相互干渉の在り方について分析を行った。それにより、信仰と無信仰(不信仰)の対立は、単に世界観や思想的立場の対立としてのみならず、文化の動態的自己発展の過程で文化自体が前提とすると同時に産出する自己言及性の顕現の具体例としても理解できるのではないか、という仮説が浮かび上がった。今後はこの仮説の明確化と実証に向けて研究を進めることとなろう。(石川) パリ第4大学で16世紀文学担当教授と共同研究を行い、モンテーニュ『エセー』における自己言及性の機能について、とりわけ『エセー』の刊行本の余白に自ら書き込みや修正を行い続けた作家の姿勢の深い意味について研究を進めた。(大久保) ロベール・シャールの『宗教についての異議』を訳出刊行する傍ら、そのマルブランシュ批判に現れる反キリスト教的思想を自己言及性の観点から解読した。また、ヴィルヌーヴ夫人『美女と野獣』とスキュデリー嬢『クレリー』の有名な「恋愛地図」の比較を通じて、小説作品がもつ自己言及性が間テクスト性という形で実現される際の意味産出力について明らかにした。(藤原) 研究課題に沿い、フランス語が、中世フランス語から、思考、文芸、学術の言語として成長し、近世フランス語に至り、自らの言語を内省し、その特質を照らすようになる痕跡を、おもに言語学的な側面から探った。アプローチとしては、フランス語への内省的言説の先鋭化が、中世フランス語から16世紀フランス語への形式的変化とどのように対応してゆくかに力点を置いた。また、特に言語の構造面に置ける「自己言及性」を考え、文の示す過程(イベント)への言及として、アスペクト辞のRE-を取り上げた。(小川)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究のアプローチはまだ未開拓の部分が多く、準備的研究および方法論的模索に重点を置いて研究を進める必要があるため、現時点では十分具体的な研究成果に結実しているとは言い難い面がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者および分担者がそれぞれの分野で自己言及性の諸様態の探求を続行するのに加え、今年度以降はより意識的に相互の連携を図り、研究課題に関する総合的知見の提示に向けて注力する。具体的には、本研究課題をテーマとする研究会やシンポジウムを企画運営し、同じ関心を有する学内外の研究者との交流を行う中で、より実質的な研究成果の結実に向けて努力する。
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Research Products
(4 results)