2013 Fiscal Year Annual Research Report
小説の書き出しの研究:スペイン文学におけるトポス生成と変容過程の考察
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21520337
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大楠 栄三 明治大学, 法学部, 准教授 (80315853)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エミリア・パルド=バサン / ベニート・ペレス=ガルドス / スペイン小説 / 書き出し / 19世紀スペイン / 女性作家 |
Research Abstract |
本年度の計画にそって,女性作家パルド=バサンの中期小説を対象に,〈書き出しのトポス〉について検証を進めた。しかし,書き出しに凝縮して現れる,1890年以後の作品における〈語りの急変〉の要因を,作家が目指した小説美学の変容のみに求めるのは無理がある。むしろ,19世紀末のスペイン社会に生きた〈女性〉としての立ち居振舞い,すなわち「ジェンダー」が大きく影響したのではないか? とくに,彼女が交際した大作家ベニート・ペレス=ガルドス(1843-1920)の作品が影響を及ぼしたのではないか? こうした推測のもと,まず第一に,二人の関係を確認するため,両者の書簡と伝記的研究を収集し,読み込みを進めた。結果,交際が彼らの関係性に応じて,大きく3つの時期――I:師弟期1883-87,II:熱愛期1888-89,III:熟年期1890-1920――に区分できることを明らかにした。 他方,パルド=バサンの1889年以後の作品に登場するヒロインが例外なく精神的に〈強い女性〉,しかも経済的自立を目指す女性であることに注目した。彼女たちが,20世紀初頭の小説に登場する〈新しい女〉の萌芽であることを示すため,スペイン文学史上もっとも有名な〈強い女性〉の一人,ガルドスの初期小説『ドニャ・ペルフェクタ』(1879)のヒロインについて考察をすすめた(結果的に,翻訳を刊行することになった)。まさに「完璧」"Perfecta"という名のヒロインの〈強さ〉は,自分は「パーフェクト」だと信じ込む,自己の無謬性を疑わない「狂信」にあり,前述の〈強い女性〉とは似て非なるタイプであることを「訳者解説」にまとめた。 上記の,パルド=バサンの小説世界と現実世界との関係性を,小説第8作『郷愁』(1889)を例に論じる発表を,「19世紀スペイン文学会」の第7回大会(テーマ:「19世紀における歴史の文学的視像」,スペイン・バルセローナ大学,2014年10月22-24日)で行う予定で,発表申込みが受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)