2013 Fiscal Year Annual Research Report
アルゼンチンにおける日本の詩歌の受容と価値観の変化についての研究
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21520386
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
井尻 香代子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (70232353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 榮一 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 名誉教授 (80073344)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルゼンチン・ハイク / 価値観の変化 / 共同体的創作法 / 即興的パフォーマンス / 環境史における変動 / 自然観の変容 / 歳時記 / エコロジー |
Research Abstract |
1.具体的内容 今年度は5年間の研究課題の完成年度にあたる。これまでの研究成果に基づいて、日本の詩歌の受容とアルゼンチンハイクの生成プロセスが、アルゼンチン社会にもたらした価値観の変化について調査を進め、論文にまとめた。その際、日本における詩歌の発展と自然観の変化、欧米における俳句の受容と環境意識の変容も併せて考察した。(1)俳句が世界的に普及した要因として、連歌、俳諧から伝承された参加型、共同体的な創作方法と即興的パフォーマンスを可能にした詩型に着目した。個人主義的な西欧近代詩に対して、詩歌の制作や享受に関する価値観の変化をもたらした。(2)環境史における変動と自然観の変容を取り上げ、連歌、俳諧の生成は、いずれも日本列島の環境史において大きな変動の時期に一致し、俳句・ハイクの成立と普及は国内外における近代産業社会の形成に呼応するように進展したことを検証した。その結果、日本の詩歌の発展と俳句の世界的普及は、環境の変動に伴う自然観の変動と密接なかかわりがあることが明らかになった。支配的であった優美な和歌言語の体系は俗語による模倣やパロディを取りこんで変容し、都市や里山の生態系を取り入れて組み直された自然観を表象する俳諧言語となった。一方欧米では産業革命後、長期的持続性を維持していた自然と人の関わりは大きな変動を被り、この破綻を乗り越えるためには、人間を環境や生態系の支配者ではなく構成員と捉えるべきであるとする自然観が広がった。日本では「民間の自然観」を歳時記に反映した俳句が生成し、欧米では環境思想やエコロジーとハイク制作がリンクして発展したのである。 2.意義 日本の俳句はその詩型と詩学に、共同体的創作法と自然観の変容を内包することによって世界的な展開を実現した。今日俳句は、環境の中の人や文化のあり方を探る価値観を共有する試みとなっていることを解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)