2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520407
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
和田 学 山口大学, 人文学部, 准教授 (10284233)
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Keywords | 受動形態素 / 複合動詞 |
Research Abstract |
22年度は、複合動詞と受動形態素の分布に関する日本語と韓国語の違いを分析する準備段階として、主に複合動詞の比較対照を行った。 日本語の受動形態素が語彙的な複合動詞の第一要素になれないのに対して(*吸われ込む)、韓国語では受動形態素が複合動詞の内部に現れ得る(pal-li-e tul-ta)。これらの違いが存在することは、先行研究では指摘されておらず、両言語の受動構文を対照する上で重要な事実である。この事実からは複合動詞化の過程より、日本語では受動化が遅く適用し、韓国語では早く適用しているという一般化が得られる様に見える。 しかし、日本語の語彙的複合動詞の形成が語彙部門で形成されることが明らかであるのに対し、韓国語の複合動詞が形成される部門として語彙部門を挙げる説と統語部門を挙げる説とが対立している。22年度は、韓国語の複合動詞に意味的な特異性がみられること、語彙的名詞化が適用すること等の事実を指摘し、これらの複合動詞が語彙部門で形成されることを示す強い根拠を提示した。また、統語部門説の根拠となる限定詞の挿入が日本語の特殊な複合動詞にも観察されることを挙げ、統語部門説を支持するとされている事実が根拠となりえないことも併せて示した。これにより、韓国語の受動化が日本語の受動化より派生の早い段階で適用するという一般化の妥当性が保証できることを示した。また、日韓の複合動詞の類型を整理することで、いわゆる語彙的緊密性の原則の細分化や適用範囲の明確化の可能性を示唆した。
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Research Products
(2 results)