2011 Fiscal Year Annual Research Report
韻律ラベリングのデータベース化のための曲線音調表示された韻律階層の日印対照
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21520411
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
児玉 望 熊本大学, 文学部, 教授 (60225456)
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Keywords | 談話音声 / アクセント史 / 二型アクセント / 境界表示 / 韻律階層 |
Research Abstract |
日本語方言の韻律分析に関連しては、鹿児島県立図書館方言ライブラリ所蔵の音声資料のうち、特に鹿児島県本土周辺の特徴ある二型アクセントをもつ諸方言の談話資料をデジタル化して分析した。特に、屋久島と甑島はアクセント研究史上重要な多様なアクセントが分布することで知られるが、談話音声にみられる発話の揺れの有無を観察することにより、これらの諸方言のアクセントの型が文節を単位として実現する曲線声調として記述できることを明らかにした上で、先行研究とは大幅に異なるアクセント系統分化を経たという確信をもつに至った。また、鹿児島県本土の諸方言を含む九州南部地域において共通する特徴として、すべての型が境界声調を持ち、東京方言の平板型や京阪方言の有核型および高起無核型のような右端での境界表示機能を欠いたアクセント型がない、という事実が、特に西南日本におけるアクセント史の解明において注目すべき事実であることを明らかにすることができた。また、昭和期の市町村を単位とする鹿児島県立図書館方言ライブラリ資料は、市町村内のアクセント差まで確認できる密度の高い研究資料であるが、甑島のような地域はこの資料でも捕捉できない集落ごとのアクセント差があり、補完のための談話資料収集が急務であることがわかった。 インド南部の言語については、前年度に続き、テルグ語の東北部方言と、カンナダ語の西南部方言を中心として談話資料を収集し、これらの型の弁別をもたない諸言語においても、語あるいは日本語の文節に相当する単位で曲線声調による境界表示が変異形をもつことが確認できた。九州など日本語の一型アクセントとの対照の方法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
談話資料の韻律分析の重要性に着目する研究であり、談話資料の分析は順調に進んでいるが、本年度は特に日本語諸方言の分析の関係で、当初は予想していなかった日本語アクセント史研究上の重要な発見があり、今後やるべきことが増えたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、日本語諸方言と南インド諸言語の談話資料収集を中心とした研究を実施するが、日本語諸方言については、甑島の集落ごとの談話資料の収集が急務であることがわかったので、優先して現地調査を行いたい。また、他の地点についても、九州西南部二型アクセントのアクセント史の解明のための重要性を考慮して談話資料の収集地点を決定したい。 当初は、収集した談話音声資料のラベリング付き公開を目標としていたが、個人情報保護等の観点から、談話音声全体の公開にはまだ課題が多いため、アクセント的特徴の例示に十分な程度でのサンプル的公開の方向で検討している。
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Research Products
(3 results)