2010 Fiscal Year Annual Research Report
母語と非母語の音の音響的実測値と知覚上の距離:3言語の母語話者の相互比較
Project/Area Number |
21520420
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野澤 健 立命館大学, 経済学部, 教授 (30198593)
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Keywords | 英語 / 日本語 / 韓国語 / 母音 / 子音 / 知覚 / perceived similarity |
Research Abstract |
英語、韓国語、日本語の母語話者を対象にした音節末の鼻音と開放を伴わない閉鎖音の同定実験では、日本語話者が最も正答率が低く、韓国語話者は有声・無声閉鎖音の間の誤答を他の言語の話者よりも多くすることがわかった。一般に、鼻音では[n]の正答率が低く、鼻音、閉鎖音とも低母音よりも高母音に先行されると同定が困難になる傾向が見られた。母音の知覚上の距離に関しては、3言語の話者とも英語の/i/、/u/と日本語の「イ」、「イー」、「ウ」、「ウー」との距離では、英語の/i/、/u/は2モーラの母音との類似性が高いという判定をしたが、日本語話者のみ母音長による判定に有意差を示した。英語の/∩/と日本語の「イ」は、韓国語話者を除いて知覚上の距離は平均よりも離れているという判定をしたが、英語話者は英語の/∩/と「エ」が非常に近いという判定をした。実際、/I/と「エ」は母音空間上の位置でも近い。韓国語の/i/と英語の/i/,/I/との距離の判定では有意な差がなく、母音空間上の位置でも韓国語の/i/は英語の/i/や日本語の「イ」に比べて低く、Frieda & Nozawa (2007)で韓国語話者が英語の/i/-/I/の弁別を苦手にしていた結果を支持している。母音空間上の距離は離れており、日本語話者と韓国語話者は離れた距離にあると判定した英語の/a/と日本語の「オ」を英語話者は比較的近いと判定した。また、子音の知覚上の距離に関しては、有声・無声の判定において各言語の母語話者の間で差が大きく見られ、日本語話者は日本語の無声閉鎖音と英語の無声閉鎖音、韓国語の激音を近い音と判定したが、韓国語話者は離れた音と判定した。日本語話者は日本語の有声閉鎖音と韓国語の平音を近い音と判定したが、韓国語話者は離れた音と判定した。また、英語話者は英語の有声閉鎖音と韓国語の濃音を近い音と判定する傾向が他の言語の話者よりも強かった。
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