2011 Fiscal Year Annual Research Report
言語転移の双方向的検討-日本語の連体修飾構造の習得を中心に-
Project/Area Number |
21520530
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
奥野 由紀子 横浜国立大学, 留学生センター, 准教授 (80361880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 麟声 大阪府立大学, 人間社会学部・人間社会研究科, 教授 (80331122)
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Keywords | 言語転移 / 双方向的検討 / 連体修飾構造 / 「の」 / 日本語学習者 / 中国語学習者 / 韓国語学習者 |
Research Abstract |
(1)韓国人日本語学習者(L1韓L2日)と日本人韓国語学習者(L1日L2韓)の双方向的検討を行った。 22年度の実施した調査をもとに双方向的に検討した結果、日本人韓国語学習者の場合では予測と異なり,言語構造(「の」や「〓」の有無)、が一致している場合の成績の方が低かった。また、韓国人日本語学習者には「の」の脱落が起きやすいが、その裏返しとして予測し得る、日本人韓国語学習者における「〓」の付加傾向は明確に認められなかった。対照言語分析時代の難易度階層仮説より、言語間で「一致」しているものは「不一致」より「易」しいという予測がこれまで当然だとされてきたが、そうではなく、日本人韓国語学習者は、韓国語では名詞句において「〓」がないものがデフォルトであると認識し、韓国語学習者は日本語では名詞句において「の」があるのがデフォルトであると認識するという学習者独自の目標言語規則をもとに判断している可能性が高いことが明らかとなった。 (2)日本語学習者と中国語学習者の双方向的検討 中国語によるHSK動的作文コーパスにおいて、中国語学習者に「的」の過剰使用が多くみられたヘッドと修飾部の意味関係による3つのケースと、日本語によるKYコーパスにおいて日本語学習者に「の」の脱落が多くみられた3つのケースに関して、双方向的検討を行った。 その結果、日本語学習者と韓国語学習者の言語構造の双方向的検討と同様、意味的な関係による双方向的検討においても、必ずしも誤用の傾向は表裏一体ではないことが明らかとなった。また、同じケースであっても名詞句によって、異なる傾向があることが明らかとなり、使用頻度の高い語彙や、四字熟語と認識しやすい語種なども関連していることが伺われた。 これらの成果からこれまで対照言語研究だけでも、習得研究だけでも明らかにされてこなかった言語転移の新たな実態や様相が伺え、言語間の双方向からのアプローチは、言語転移の原理を検討する新しい方法の一つとして、その有効性を指摘し得た。
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Research Products
(3 results)