2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世民衆が想う異国像の研究―寛文~享保期の異事奇聞をめぐって―
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21520705
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
位田 絵美 北九州工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (30353345)
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Keywords | 異文化認識 / 異事奇聞 / 長崎旧記類 / 漂流物語 / 日本人観 |
Research Abstract |
本研究の目的は、未開拓資料の調査分析を通じ、寛文~享保期の民衆が見た異文化認識を解明することである。従来、異事奇聞は流言蜚語として研究対象外とされてきた。本研究はその間隙を埋め、これまでの研究では解明できなかった民衆の異文化認識や日本人観を新たに解明する。平成23年度の研究成果は、第107回福岡日韓フォーラムで発表し、『近世初期文芸』第28号に掲載されている。以下、1~3に、その研究内容と成果を示す。 1、全国の未翻刻の異事奇聞(「長崎旧記類」「漂流物語」等)の調査収集を精力的に行い、史料の翻刻・整理を行った。また翻刻した史料を精読し、時代背景との関連性を分析した。 2、韃靼漂流事件をもとに物語化された『異国旅すゞり』『朝鮮物語』には、日本独自の異国情報がある。異文化情報は、本文だけでなく挿絵にも反映されている。しかし従来の研究では、異本の本文比較は行われるが、挿絵の比較研究は看過されてきた。本研究では『異国旅すゞり』『朝鮮物語』の挿絵分析を行い、両者の相違点・共通点から、当時の読者が異文化をどう認識していたかを解明した。 3、『嶋原記』は少なくとも3回以上の改版が行われ、多くめ先学が諸本比較を行ってきた。一方で、挿絵改訂の分析は、ほとんど手付かずの状況だった。本研究では『嶋原記』3種の挿絵分析を通じて、3種の挿絵の特性と、挿絵が改訂された意図を分析した。 今後は、本文と挿絵の整合性や、同時代の他の小説挿絵との相違・共通点を確認し、挿絵の持つ意味をより深く分析する。また、本文と史実との比較分析を行い、異事奇聞の執筆・編纂意図を明確にしたい。その結果、異事奇聞の編著者や読者が持っていた意識(読者が異文化や自国の文化を見る感覚)を浮き彫りにして、研究史上に新しい知見を提示したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国の異事奇聞の未翻刻資料の調査・収集は、ほぼ計画通りに進行している。翻刻・分析作業も、ほぼ計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
異事奇聞の調査・収集・分析作業は、このまま継続する。今後は、さらに本文だけでなく、挿絵の分析を推進する。具体的には、まず本文と挿絵の整合性を確認する。次に、挿絵の同時代性(時期によるステレオタイプ化)を確認する作業を行う。その上で、本文と挿絵の両面から、異事奇聞の執筆・編纂意図を考察する。
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Research Products
(2 results)