2012 Fiscal Year Annual Research Report
近世民衆が想う異国像の研究―寛文~享保期の異事奇聞をめぐって―
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21520705
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
位田 絵美 北九州工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (30353345)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 異文化認識 / 異事奇聞 / 長崎旧記類 / 漂流物語 / 日本人観 / 挿絵 |
Research Abstract |
本研究は、寛文~享保期の異事奇聞の分析を通じ、当時の民衆が見た異文化認識を解明することを目的とする。異事奇聞は信頼性が低いとして、これまで歴史学や文学の研究対象外とされてきた。本研究はその異事奇聞を使用し、従来の研究で未解明だった民衆の異文化認識や日本人観を明らかにする。平成24年度の成果は、第72回「書物・出版と社会変容」研究会で発表し、『近世初期文芸』第29号に掲載されている。以下1~3に、主な研究内容と成果を示す。 1、異事奇聞の調査収集を精力的に行い、史料の分類・整理を行った。また翻刻史料を精読し、本文と挿絵との関連性や、当時の世相をいかに反映しているかを分析した。2、島原の乱を描いた仮名草子『島原記』には先行する写本が多い。写本から仮名草子への本文異同に時代背景が反映していることは周知の事実だが、従来看過されてきた挿絵の変遷にも、当然ながら世相が投影されている。本研究では、江戸時代を通じて『島原記』の挿絵の変遷を詳細に分析し、挿絵の相違点・共通点から、当時の読者が切支丹や異文化をどう認識していたかを考察した。3、仮名草子『大坂物語』は少なくとも18種に及ぶ版が確認され、多くの先学が諸版整理・本文比較を行ってきた。一方で、挿絵は5回の全面改訂が確認されるが、その分析はほとんど手付かずの状態である。本研究では『大坂物語』5種のうち、まず江戸時代初期の2種の挿絵分析を通じて両者の挿絵の特性と、挿絵が改訂された意図を分析した。 異事奇聞の本文と挿絵の整合性を検討する研究は少ない。本研究では、同時代の他の小説挿絵との相違点・共通点を確認し、挿絵のステレオタイプ化やその意味を分析した。この成果は、異事奇聞とその挿絵の研究が、当時の認識(読者が異文化や自国文化を見る感覚)を知る上で非常に重要な要素を浮き彫りにしており、今後より広範な視点からの研究を喚起するといえる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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