2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520774
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
三宅 俊彦 Senshu University, 文学部, 兼任講師 (90424324)
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Keywords | 考古学 / 海域アジア / 中・近世 / 債幣 |
Research Abstract |
平成21年度は、本研究の重要な調査項目である、ベトナム北部の一括出土銭調査を中心に進めた。日程は9月13日~22日に行われた。我々が入手している4号~6号資料と呼ばれる一括出土銭資料の、銭貨銘の読み取りと分類を行い、それぞれ状態の良いものを選び、拓本・写真撮影・スキャナーによる読み取りを行い、基礎データ化を行った。また銭貨の法量の計測も行った。 4号資料は総計3,535枚あり、最新銭は明の大中通寳(1361年初鋳)であることから、14世紀末~15世紀初頭に埋められたものと推測される。これらの銭貨は、中国の銭貨が主体であり、中国の銭貨がベトナム国内で流通していた具体的な様相が明らかとなる、重要な発見である。銭貨は67枚を一単位として緡紐に通されていた痕跡があり、ベトナム独自の短陌慣行の存在をうかがわせる。 5号資料は銭貨がさび付いて塊になった約5kgを現状保存し、それ以外の銭貨を調査した。調査したのは4,409枚であった。最新銭はベトナムの洪順通寳(1509年初鋳)であり、16世紀前半ころに埋められたと考えられる。これらの銭貨は、基本的には中国のものであったが、ベトナム銭も一定量含まれており、両者が混ざって流通していたことを示している。また、全く同じ法量で作られた北宋の銘文をもつ私鋳銭が相当数存在しており、これがどこで作られたものか解明する必要がある。今後の課題である。 6号資料は総計1,454枚あり、中国とベトナムの銭貨が混じり合っていた。基本的にみな制銭であり私鋳銭はない。最新銭はベトナムの景統通寳(1498年初鋳)であり、15世紀末~16世紀初頭のものと思われる。 これらの資料の調査により、ベトナムの各時期の流通銭貨の様相がかなり明確になってきた。平成22年度は、これらの資料を整理し、報告書としてまとめる予定である。
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