2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本土地所有権構造の形成と変容-土地と「ムラ」の法史学
Project/Area Number |
21530013
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川口 由彦 法政大学, 法学部, 教授 (30186077)
|
Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2013-03-31
|
Keywords | 土地所有 / ムラ / 村会 / 調停 / 裁判 / 自作農創設 |
Research Abstract |
本年度は前年度までに収集した資料をもとに、地主・小作関係の特質を特に掘り下げて検討した。 明治維新を経て、明治政府は、それまで物納を基本とした年貢を金納を基本とする租税に転換しようとした。明治政府のもとに開設されていた公議所で副議長をしていた神田孝平は、「田租売買ノ議」を提出して私的所有の重要さを申述し土地の売買を自由にすれば、直ちに土地売買が広がり、市場を通して適切な土地価格が形成され、農民による経済合理的な農業経営が行われると述べた。これを採用した政府は1872年に土地売買の自由を認める「土地売買譲渡ニ付地券渡方規則」を発布した。これは、土地売買・譲渡が行われれば、その都度地券を発行するというものだった。 この構想は、土地売買を自由にすれば、私的土地所有権を広く一般化できるという楽天的な発想であり、現実には政府の考え通りに事は進まなかった。 そこで、大蔵省租税頭に抜擢された陸奥宗光は、売価主義は現実的な方策でなく、土地の生産力に基づいて客観的に地価を定めるという方策を主張し、明治6年に始まる地租改正の基本方針を設計した。 この地租改正事業は、領主・百姓関係においては、原則として領主への所有権付与を認めず、百姓所持権を私的所有権と捉え、領主的土地所有を否定した。一方、江戸後期以降、増大していた地主・小作関係については地主を所有権者として、小作人に所有権を与えない方針が採用された。地租改正事業に際し、政府は、小作地を大きく「永小作地」と「普通小作地」に分け、小作人に強い権利を認める「永小作地」を限定的に認め、その他を地主の権利が強い「普通小作地」に転換しようとした。この結果、地主・小作関係は近世にみられた重畳的所有権構造を継承し、このことを前提に民法不動産賃貸借規定が定められた。
|
Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|