2011 Fiscal Year Annual Research Report
担保法制の現代化・国際化:UNCITRAL担保立法ガイドを契機として
Project/Area Number |
21530081
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田高 寛貴 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60286911)
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Keywords | 担保 / UNCITRAL / 民事法学 / 包括担保 |
Research Abstract |
本研究は、わが国における担保法制について、現時ないし将来において金融取引実務に不足ないし不備があると考えられる諸点を精査し、また、国際的な担保取引に対応することをも視野に入れつつ、これからのあるべき担保法体系について総合的かつ具体的に提示することをめざすものである。その手がかりとして、本研究において主要な検討対象とするのが、2007年12月に国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)総会において承認・採択された「UNCITRAL担保取引立法ガイド」である。 研究最終年度となった平成23年度は、一昨年度、昨年度に引き続いてUNCITRAL立法ガイドの内容を検討するとともに、同ガイドに大きな影響を与えたアメリカ担保法の比較法研究を行った。アメリカで採用されている包括担保を可能とする制度枠組みは、同立法ガイドでも承継されており、今年度もこの点を中心に検討を行った。アメリカ担保法では、個々の財産ごとに担保制度を用意しているわけではなく、ひとつの担保制度のなかでさまざまな担保目的財産に対応できるようなしくみがとられていることが特徴的である。ただ、公示制度等に根本的な相違のあるわが国において同様のしくみをただちに採用できるのか、あるいは公示方法の不足が第三者に不測の損害を与える可能性はないのか等、なお検討が必要な点が残ることも明らかとなった。 さらに、今年度は、わが国における包括担保の運用状況について検討をすすめた。わが国でも各種財団抵当制度は用意されているが、あまり利用されてはいない。その要因としては、流動財産の担保化に難がある点が大きいことが実務担当者らからの聞き取り調査によって明らかとなった。なお、流動動産の担保化は、譲渡担保をはじめとする非典型担保が担っているが、近時、この領域において注目すべき最高裁判決が相次いで出された。ここでは、流動財産の処遇をめぐる問題が顕在化していたが、これら判例の検討を契機として、第三者効を承認することの基礎となる「公示方法」について理論的基礎を構築する必要性を明らかにした。 これら実務の対応や裁判例の動向をふまえ、わが国における流動財産を含む包括的な財産の担保化について、実態と問題点を明らかにした後、最終的には、UNCTRAL立法ガイドがめざす方向性が、わが国における包括担保の可能性と問題克服に貢献しうる素地をもつことを指摘し、研究のいちおうの区切りとした。
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