2011 Fiscal Year Annual Research Report
航空輸送コストの変動が日本の国際分業に与える影響-貿易数量指数を用いた実証分析-
Project/Area Number |
21530208
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
永田 雅啓 埼玉大学, 教養学部, 教授 (50261871)
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Keywords | 航空輸送 / 輸送コスト / 貿易 / 数量指数 / 国際分業 |
Research Abstract |
2011年度には、研究代表者が中心となり、独自に開発したソフトウェアを用いて2010年分の日本の貿易指数データベースを作成した。同時に、輸送手段別(航空輸送か海上輸送)の指数を作成することで航空輸送貿易に関わる数量指数、価格指数、金額が計測可能となった。 2003年以降、原油価格の上昇は航空輸送にもコスト面で大きな影響を与えたと考えられる。アメリカの貿易に関する分析では、マクロ的に見ると航空輸送への依存度が低下し、海上輸送やトラック輸送への代替が進んだように見える。しかし、品目別貿易相手国の分析をしてみると、航空輸送への依存度はそれほど低下しておらず、むしろ、航空輸送への依存の小さな地域に対する貿易量の拡大がマクロ的な航空輸送への依存低下の主たる要因と考えられる。 2010年の日本の貿易を取り巻くマクロ的な環境は、世界経済のリーマンショックからの回復と円高の進行である。まず輸出面では円ベースの輸出価格を2008年比10%超引き下げたにも拘わらず、ドルベースの輸出価格は上昇を続け、2010年の輸出数量は2008年の水準を回復していない。特に欧米への輸出数量でその傾向が顕著である。その一方で、対ASEAN、対中国では輸出数量の大幅な上昇が見られる。次に輸入面で見ると、円ベースでの輸入価格の急速な低下によって輸入数量も回復している。ただし、ここでも、対アメリカ、対NIEsでは輸入価格が大きく下がっているにも拘わらず輸入数量の回復は緩慢だが、対ASEAN、対中国では輸入価格がそれほど低下していないにも拘わらず輸入数量の増大が見られる。すなわち、対ASEAN、対中国との間では、短期の景気変動や為替変動に左右されない輸出入量の拡大が見られる。これは、こうした国々と日本の産業との間の国際分業が深化し、一時的な為替変動や景気変動に左右されない貿易構造になりつつあることを示している。
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