Research Abstract |
我々は,日本の自動車部品産業における事業所間の技術の外部性および集積の効果について,空間計量経済学の手法を用いて定量的に分析を行ってきた(Yosuke TAKEDA and Ichihiro UCHIDA, "Technological Externalities and Economic Distance : A Case of the Japanese Automobile Suppliers." RIETI Discussion Paper Series 09-E-051).その成果の一部を活用しながら,平成21年度は,以下のテーマについて研究を進めた. 第1に,Prescott and Visscher(1980)によって提示された,資本の調整費用における「組織資本」の役割について理論的に整理を行っている.組織資本は,企業の調整費用の発生において,以下の3つの側面に関わる.(1)情報蓄積・共有,(2)経営管理の範囲(Span of Control),(3)リスク回避である.第2に,日本の自動車産業がリードするハイブリッド技術の導入に際して,上記の側面を通じた組織資本による調整費用の軽減の程度について定量的に分析する準備を行っている.ハイブリッド技術は,ガソリン車から電気自動車へと不可逆的に移行する自動車の駆動系技術において鍵となる製品技術革新であり,調整費用の発生を不可欠としてきた可能性が高い.従来の自動車業界では,機械工学に基づくR&Dを含めた技術開発が主であり,ハイブリッド技術を含めた電気自動車の開発・販売においては,電気・電子工学のR&Dが主要となる.自動車部品会社を含めた組織改編,幹部・従業員への電気・電子工学の教育,新規従業員の採用方針の変更など,調整費用を左右する組織資本の蓄積の大幅な変更を余儀なくされると予想される. 実証分析では,Cooper and Haltiwanger(2006)に従って,日本の自動車産業の事業所ベースのデータを用いてSMM(Simulated Method of Moment)に基づいた企業の動学的1階条件を推定する準備を行った.この推定では,調整費用関数の形状が凸性を有するか,非凸性かが問われる.
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