2011 Fiscal Year Annual Research Report
携帯電話事業における垂直的取引制限に関する理論的研究
Project/Area Number |
21530241
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
紀國 洋 立命館大学, 経済学部, 教授 (90312339)
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Keywords | 携帯電話事業 / 垂直的取引関係 / 計画的陳腐化 / 技術補完性 / パテントプール / 研究開発投資 |
Research Abstract |
本研究は、携帯電話事業における通信キャリアと端末機メーカーの間の垂直的取引関係、および携帯電話技術の開発企業と端末機メーカーの間の垂直的取引関係に着目しつつ、これらの取引関係が市場の競争性や技術開発投資インセンティブにどのような影響を与えるかを、産業組織論アプローチを用いて分析するとともに,望ましい事業規制のあり方を検討することを目的としている。 研究の具体的内容は以下のとおりである。いずれの研究もオリジナルモデルを開発して行った理論研究であり、その成果は今後の携帯電話事業の規制・政策に応用可能なものである。 1.携帯電話端末機の計画的陳腐化問題 携帯電話端末機のメーカーが製品に組み込む耐久性の水準を、耐久財市場モデルの枠組みにおいて検討した。従来の研究では、企業が選択する物理的耐久性は社会的に過少な水準になるとされているが、本研究では、リペア市場が存在する場合には、企業は過大な耐久性を選択する場合があることを理論的に明らかにした。 2.携帯電話技術のパテントプールと研究開発投資 携帯電話技術に関してパテントプールが形成されている場合、技術開発企業と携帯電話端末機メーカーとの間の垂直的取引関係のあり方によって、特許のライセンス料が異なり、それが市場価格にも影響することを理論的に示した。 3.携帯電話端末機メーカーによる研究開発投資の選択 携帯電話端末機の技術には企業特殊的技術と補完的技術の2種類の技術が存在するが、企業特殊的技術への投資比率は社会的に過大となり,補完的技術への投資比率は過少となることを理論的に明らかにした。 4.携帯電話事業者の共同研究開発活動 携帯電話事業者がプロセスイノベーションとプロダクトイノベーションの両方に従事する場合、プロセスイノベーションに関する技術スピルオーバー効果が小さくとも、事業者間で共同研究活動を行うことが経済厚生を高めることになることを理論的に明らかにした。
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