2011 Fiscal Year Annual Research Report
非民主主義体制下の経済政策決定のゲーム論的政治経済学による分析
Project/Area Number |
21530268
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
村瀬 英彰 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40239520)
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Keywords | 内生的経済成長 / 非民主主義 / ガバナンス / 政治経済学 / 経済停滞 |
Research Abstract |
「なぜ、国々の経済成果は異なるのか?」本研究では、中位投票者定理に代表される民主主義下の政策決定とは異なる非民主主義下の政策決定の多様性にその原因を求めてきた。2011年度の研究では、経済の初期条件が非民主主義下で採用される政策の分化にいかなる影響を与えるかを中心に分析を行った。具体的には、政権維持と生産果実の獲得を目指す政治エリートが目的達成のために再分配政策を戦略的に採用するモデルの中で経済の物的資本の賦存量に応じて自己強化的に政策分化が生まれることを示し、同時に政策分化の分岐点の位置が経済の遺産動機の強さ、物的資本の収益性、人的資本の賦存量によって変化することを示した。こうした政策の内生選択の解明は、かつてのアジア諸国に見られた非民主主義下での急速な経済成長や近年のアフリカ諸国一部にみられる停滞経済から成長経済への劇的な転換を(偶発的なものとしてではなく)経済の基礎的条件と関連付けながら説明できるようになるという意義が最も大きい。なお、2011年度は、「ジャスミン革命」を発端として2011年および2012年現在も進みつつある体制転換という新たな事態の変化が生じたため、非民主主義下での政策決定という視点だけでなく、非民主主義体制の存続と政策決定の関係についても手がかりを得るモデル構築も試みた。こうした体制転換は、それが始まって間もなくのものであることから、まだその帰結に関しては不確実性が存在する-それが真に民主主義体制への移行を意味するのかなど。このため、断定的な結論の性急な導出は避けねばならないが、体制維持に徴税コスト、エリート集団の数、エリートの時間的視野という要因がいかなる影響を与えるかをモデル分析し、それぞれが分配原資の不足、体制維持活動におけるただ乗り問題の発生、次期の政権継承へ向けての大衆抑圧の強化を通じて体制維持にネガティブな効果を持つという結果を得ている。
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Research Products
(3 results)