2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世以降の農業水利事業規模の数量的把握と水利慣行の存続・変容の経済学的分析
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21530348
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
勘坂 純市 創価大学, 経済学部, 教授 (20267488)
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Keywords | 近世日本 / 土地改良事業 / 経済史データベース / 勤勉革命 / エスター・ボズラップ |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、『宮城県土地改良史』(1994年)等の各地の土地改良事業の資料をもとに、近世日本の土地改良事業のデータベースの拡充をはかった。 さらに、このデータベースで得られた知見をもとに、日本近世の経済発展における土地改良投資を通した資本蓄積の意義を明らかにした。従来、近世の経済発展はエスター・ボズラップのモデルに従って、人口増加に対する農業の労働集約化の過程として理解されている。また、この労働集約化の過程は、速水融によって「勤勉革命」と名付けられている。例えば、大島真理夫編『土地希少化と勤勉革命の比較史』(ミネルヴァ書房、2009年)はこうした枠組みで各国の歴史を比較している。しかし、労働の集約化のみに注目する視角では、土地改良投資が近世日本の経済発展に果たした決定的意義が見失われてしまう。そこで、本研究では、先のデータベースの結果を示し、16世紀以降に灌漑、治水等の資本投資が積極的に行われたことを明らかにし、大島らの比較研究を批判した。 一方、こうした資本投資の意義の強調は、ボズラップ研究にも大きな意義をもつ。ボズラップ自身は、土地と労働の二元論ではなく資本蓄積の意義を十分に認識していた。この点を経済学的モデルを用いて明らかにするともに、近世日本でそのモデルに従った経済発展があったことを明らかにすることができる。この研究成果は、ウィーンで開催された、ボズラップ生誕100年記念シンポジウムEster Boserup Conference 2010:a centennial tributeで発表された。
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Research Products
(3 results)