Research Abstract |
本研究の目的は,マンガの国際競争力を生み出す創造的事業システムを,国際比較を通じて解明することである.研究のステップとしては,(1)日本のマンガの事業システムの進化の解明,(2)日本と海外のマンガの事業システムの比較,(3)国際競争力を生み出す事業システムの構築可能性を検討することである.(1)については,国内のマンガビジネスは2000年前後を境に,(1)インターネットの普及たともなうメディアの多様化,(2)コンテンツとしての事業領域の拡大と波及,(3)国内外における著作権保護への対応に関する変動がみられる.これらの変動にともなって,事業システムにみられた変化は,第1に,連携の範囲が拡大したこと,第2に,連携がより強固になったことである.たとえば,マンガ以外のコンテンツ制作にもみられる「製作委員会」方式は,事業リスクの分散を可能にしている.コミックを素材にしたマンガビジネスの展開では,テレビアニメやキャラクター商品事業から,実写のドラマや映画,企業CM等でのキャラクター使用など,事業領域を拡大することで,リスクを分散させながら,相乗効果を生み出している.つまり,1作品に関連する事業あるいは企業の数を増やすことは,作品の露出を増やし収益を高めると同時に,1事業あるいは1社あたりのリスクを低減させていることが解明された.また,著作権保護に関しても,出版や映像の業界団体の取り組みが加速されていることも明らかになった.(2)については,国によってマンガビジネスの発展段階や流通制度,政府の規制などが異なっているため,事業間の連携の度合いや方法に違いがみられた.(3)については,(2)の違いから,国内外での事業展開を連動させる事業システムの構築には,進出国への適応を考慮する必要があると考えられる.
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