2012 Fiscal Year Annual Research Report
人事制度の複雑性の克服に関する実証研究―知識経済におけるポスト成果主義の探求―
Project/Area Number |
21530387
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井川 浩輔 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (80433093)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 知識経済 / ナレッジワーカー / プレイング・マネジャー / ポスト成果主義 / 人事評価 / 面接 / 最小有効バラエティ / アクション・リサーチ |
Research Abstract |
本研究の目的は,知識経済への移行に伴い複雑化した人事制度を運用するプレイング・マネジャーの負担を軽減する「ポスト成果主義的人事制度」について,実証的に明らかにすることにある。平成24年度の研究実績の概要は,以下の2点に集約できる。 第1に,研究代表者と分担者がアクション・リサーチを行っている病院で実施した上司によるソーシャル・サポートの効果に関する質問票データの分析である。主な発見事実として,1)職務満足という短期的な心的エネルギーを高めるには道具的サポートが,2)人間の長期的な心的エネルギーを意味する組織コミットメントを高めるには道具的サポートに加え,情緒的サポートが必要になる,という事実が見出された。これらの結果から,「道具的サポートを基軸に,情緒的サポートが機能する」という命題を提示し,プレイング・マネジャーの負担軽減に向けて評価の仕組みをシンプル化し,評価面接の質を向上させるには,道具的サポートと情緒的サポートの両者を組み合わせるマネジメントの必要性が示唆された。本分析結果は,下記「研究発表」に記載の『経営行動科学』に公刊済みで,査読付き論文として一定の評価を受けることができた。 第2に,管理職を対象とした質問票調査の実施と分析である。研究代表者が代表を務める神戸人事研究会のメンバーが所属する3社の管理職766名から,管理職の①多忙さ,②役割,③スキル,④ジレンマ,⑤心理・態度,⑥人事管理,に関するデータを収集することができた。分析途中段階であるが,技術系かそれ以外の職種か,もしくは理系か文系かなど管理職の属性によって上記①~⑥に違いが確認され,プレイング・マネジャーの負担軽減策には彼(彼女)らの属性に適合的な施策を検討する必要性があることが示唆された。3社に対する報告書を作成し,調査結果のディスカッションをもとに各企業と分析を深めていく準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに今年度の研究計画として,1)人事部を対象とした質問票調査,2)現場管理職を対象とした質問票調査,3)病院組織における人事制度改革のアクション・リサーチにより収集したデータの分析を挙げていた。2)と3)に関しては,上記の研究実績の概要で記載のとおり,当初の計画を達成することができた。ただし,1)に関しては,調査協力先の担当者の部署異動により,統計分析に耐えうるだけの人数の人事担当者へ依頼がしにくい状況となった。もちろん,平成25年度も調査依頼は続ける予定である。しかし,既に1年分のデータは収集済みで一時点での実態把握はできることと,本研究プロジェクトのメインとなる調査対象は,人事担当者ではなく現場管理職(プレイング・マネジャー)であることに鑑みると,人事担当者への質問票調査の継続的実施が困難となっていることは,本研究プロジェクトの成果に大きな影響を及ぼすものでないと考える。以上の理由から,今年度の研究の目的はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,最終年度である今年度はプレイング・マネジャーの負担を軽減する「ポスト成果主義的人事制度」について,成果をまとめることに特化したいと考えている。具体的には,1)日本能率協会の会員企業の人事担当者を対象にした質問票調査結果に基づいて,日本企業の人事制度の複雑化に関する全体像の解明,2)神戸人事研究会のメンバーが所属する企業の管理職を対象にした質問票調査結果に基づいて,プレイング・マネジャーの多忙さ・ジレンマを解消する人事管理の解明,3)アクション・リサーチを行っている病院組織の医療専門職を対象にした質問票調査および人事評価の面接場面の映像データに基づいて,プレイング・マネジャーの負担軽減の施策が彼(彼女)らの心理・態度に与える影響の変化の解明,の3点である。なお,これらのデータ使用については既にそれぞれの組織から了承を得ており,研究を推進していくうえで現時点での問題点はない。
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