2010 Fiscal Year Annual Research Report
管理会計と経営理念の関係に関する理論的・経験的研究
Project/Area Number |
21530461
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤邉 紀生 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (80278481)
|
Keywords | 管理会計 / 経営理念 / マネジメントコントロール / 理念コントロール / 社会コントロール / 会計コントロール / アメーバ経営 / CSR |
Research Abstract |
経営理念と管理会計の関係について、平成22年度は、(1)アメーバ経営に関する研究、(2)コントロールパッケージの観点からのCSRの役割の検討、(3)京都信用金庫をケースとした調査、を実施した。 (1) 京セラのアメーバ経営における経営理念と管理会計の関係について、経営理念としての京セラフィロソフィーが管理会計システムにどのように反映されているのか構造的な分析を行った。そのうえで、管理会計システムを用いた経営管理プロセスのなかで、経営理念がどのように組織行動に反映されるのか、フィールドデータに基づき分析した。その結果として、アメーバ経営の場合は、経営理念上の課題が、管理会計実践を通じて、現場レベルでの実践課題の理解に反映されることで、組織末端に位置づけられるアメーバリーダーの単位で経営的な判断に基づいた活動を行いうる領域が作られていることが明らかとなった。これは、管理会計実践が経営者能力養成・学習プロセスにどのように関わっているのかという近年注目されている問題に対する理解を深める重要な貢献であると考えている。 (2) コントロールパッケージの観点からのCSRの役割の検討については、会計コントロール、社会コントロール、理念コントロール等のコントロールメカニズムの効果を考慮したうえで、CSR活動が独自の役割を組織的に果たしているかどうかを検討した。その結果、各種コントロールメカニズムの効果を考慮したうえでも、CSR活動への組織的コミットメントが従業員のモチベーションに正の影響を与えていることを示唆する知見を得た。 (3) 京都信用金庫における経営理念の管理会計実践におよぼす影響調査については、企業再生プロセスにおける経営理念の影響をエスノグラフィックなデータに基づいて分析し、経営理念が規範的な価値判断基準を介して当事者の感情に影響するプロセスを解明する糸口を得た。この研究成果については、EAAで学会発表を行っている。
|