2009 Fiscal Year Annual Research Report
医療事故問題の構築とインターネットにおける公共圏形成
Project/Area Number |
21530523
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
栗岡 幹英 Nara Women's University, 文学部, 教授 (20145155)
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Keywords | インターネット / 公共圏 / 言説分析 / プログ / 誹謗中傷 / 被害者非難 |
Research Abstract |
医療系プログの実態を知るために、日本最大と思われる医療系ポータルサイトm3. comでの医師によるプログ公開の実態を数量的に把握する量的調査を行うとともに、比較的アクセス数の多い代表的なプログを選び、医療事故をめぐる記述の言説分析を行った。その成果は、「インターネットは言論の公共圏たりうるか-プログとウィキペディアの内容分析-」を奈良女子大学社会学研究会発行の『社会学論集』17号に研究ノートとして発表した。 そこではこれらプログが事実を正確に記載するというよりは、むしろ恣意的にねつ造した内容を公開していること、ときにきわめて感情的な記述を行うことを具体的に指摘できた。これらプログの記載は、この特徴から医療被害者への誹謗中傷という性格を有する。また、これらプログは検証されず、また往々にしてかなり長期にわたってネット上に公開され続けるため、医療被害者に対してきわめて大きな苦痛を与え続けることになることを明らかにした。医療事故による被害とは、このような長期にわたる二次的三次的被害をも含んでいる。 さらに、大淀町立大淀病院事件の裁判過程で被告側弁護人がインターネット上の百科事典プロジェクト「ウィキペディア日本語版」の誤った記載を丸写しして準備書面を作成・提出したことを指摘し、その背景にあるインターネット上の言論状況を考察した。この作業によって、インターネット上で医療事故について発言する一方の主要なプレーヤーである医師プログについて特徴と問題点を明らかにするという作業を一歩進めることができた。 他方、言説分析に関する欧米の文献を収集し、方法論の深化をめざしているほか、聞き取りやシンポジウム開催等によって当事者の語りを収集し、今後の分析のためのデータ収集を図った。
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