2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530559
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
藤川 賢 明治学院大学, 社会学部, 教授 (80308072)
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Keywords | 社会学 / 公害 / 環境問題 / 地域社会 / 経験の社会的活用 |
Research Abstract |
本研究は、公害経験の社会的活用と伝達に関する各地の事例を総合し、四大公害訴訟以後の日本の公害経験を世界に紹介するための基礎をつくることを目的として、(1)神通川流域のカドミウム問題発生源対策を中心に、重要だが記録の少ない事例についてケーススタディを行うこと、(2)近接領域で公害研究を進める研究協力者とともに、事例を横断する枠組みをつくっていくこと、(3)それらを国際的に共有できる成果にするための準備を整えること、の3つの課題に取り組んできた。それぞれに関する今年度の研究成果は以下のとおりである。 まず、神通川流域の発生源対策に関しては、住民が、専門家や企業と協力して発生源対策に直接かかわることの意義について、規制的手法や経済的手法による環境対策と比較しつつ明らかにしてきた。直接参加は、基準以下もしくは規制対象外の対策を進めるのに有効である他、環境対策を企業の中枢的経営課題として内面化する方向での企業の姿勢にも影響を与えると考えられる。また、ヒ素中毒、大気汚染に関する他地域の事例調査を進めた。 次に、事例比較と横断的枠組みについては、研究協力者とともに中間報告書を作成した。まだ素材紹介の段階ではあるが、多くの公害問題がそれぞれに長い歴史を持ち、その過程には共通項が多いこと、とくに医師など被害者周辺の諸主体の動向が問題解決と放置のあり方に重要な役割を果たすことなどが明らかになってきた。関連して、国外の主要な環境汚染による健康被害の事例から、問題解決過程において補償金が突出した争点になり、その背後で被害者の放置や切り捨てが起こりやすい状況が分かってきた。この点では、上記の神通川流域の事例など日本の公害経験の中からは安易な幕引きを防ぐための方法も探りだせると考えられる。それを経験的・理論的に整理することは今後の課題である。
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Research Products
(3 results)