2010 Fiscal Year Annual Research Report
都市の精神分析-都市における人間-環境交流の深層心理学的解明
Project/Area Number |
21530658
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
南 博文 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (20192362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 修 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 名誉教授 (80243856)
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Keywords | 社会心理 / 文化人類学 |
Research Abstract |
(1)理論的な展望…都市の精神分析の基礎概念として、ベンヤミンの「都市のみる夢」の概念を基にしながら、夢において構成される像(イメージ)の描出を「夢の描像理論」として整理し、フロイトの精神分析における事例(ドラの事例)との対応を行なった。 (2)都市との分析的セッションとしての遊歩のフィールドワークの方法論的検討…都市をクライアントとする都市臨床の概念の下に、ベンヤミンの「遊歩」概念をフィールドワークとして実践する方法論的検討を行なった。また夢における環境体験の記述から夢における空間性(左右や高さなど)が身体軸に基づくこと、環境における過去に遭遇した場所のイメージがモンタージュ的に合成されていること、写真撮影における対象との遭遇が、偶有的で意味理解は、撮影後に行われる解釈によって遡及的に構成されること(「解釈の産婆術」と名づけた)などの力動が明らかになり、遊歩による環境移動が、精神分析における自由連想と等価な心理学的属性を持つものである事が理解された。 (3)ヒロシマおよびニューヨークの臨床観察…両都市での遊歩的なフィールドワークと写真撮影および写真集などの収集を通した、都市の描像の解析を行い、同時に都市レベルでの記憶と集合的な表象としての記念碑および再開発のプロセスにおける記憶の消去とその回復の過程を分析する枠組みを、これらの描像の解釈と共に行なう都市臨床の基本的手法を開発した。都市の大規模被災の「現地」の痕跡を、都市の記憶という面から捉える視点と、その場所が再興されていく過程で過去の記憶痕跡が消去される心理力動が都市臨床の課題として理解され、上述の方法による「解釈」の妥当性が吟味された。
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