2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジア系看護師・介護福祉士の日本における文化接触をめぐる諸問題
Project/Area Number |
21530672
|
Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
浅井 亜紀子 J. F. Oberlin University, 言語学系, 准教授 (10369457)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箕浦 康子 お茶の水女子大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (20135924)
宮本 節子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (60305688)
|
Keywords | 文化接触 / 看護師 / 介護福祉士 / 病院 / 特別養護老人ホーム / 二国間経済協定(EPA) / インドネシア / ベトナム |
Research Abstract |
グローバリゼーションと高齢化の進む中、日本政府は、経済連携協定(EPA)によりアジア系看護師・介護士の候補者(以下候補者)の受け入れを決めた。本研究の目的は、候補者の来日直後から日本での滞在期間中の異文化体験、さらに帰国後どのようにキャリアに生かすかをも含め異文化接触理論を構築する。 国内、国外のフィールドワークを行い、EPAの候補者の異文化体験に影響を与える要因がわかってきた。個人要因として来日動機、母国での仕事経験、日本語能力、環境要因として日本人スタッフとの関係、雇用条件や国家試験対策など施設の受け入れ体制、マクロの要因としてEPA制度の枠組み・運営の問題が明らかになった。とくに海外調査から、日本とインドネシア政府間、運営側と施設側とのコミュニケーションギャップがあることが明らかになってきた。 本研究の意義として次の3点が考えられる。まずEPAは、移民受け入れの突破口の可能性を含ものとして多くの研究者の関心を集めているが、ほとんどが移民制度や地域研究としての人口移動などマクロの動きを中心とした研究である。個人の異文化体験や心理といったマイクロな動きを中心にした研究は少なく、その意味で本研究はEPAの多面的理解を促すことになる。2点目は異文化接触研究では、これまで教育現場での留学生、外国人生徒を扱うものが多く、外国人労働者はビジネス分野に限られていた。看護・介護分野での外国人労働者の問題は日本が初めて体験することでその問題把握と対策を見出すことは重要な課題である。3点目は新しい異文化接触理論構築を試みる意義である。論理実証主義から社会構築主義というパラダイム変換の動きの中で、研究対象者を客体としてではなく主体として捉え、なおかつ文化移動を時間軸のプロセスでとらえる視点からのモデルが求められる。本研究はそれを目指すものとして意義がある。
|