Research Abstract |
今年度は、おもに児童・生徒用の共感的感情反応尺度の作成と因子構造の検討を行った。まず,共感性を扱った最新の研究(例えば,鈴木・木野,2008;長谷川ら,2009)を踏まえ,櫻井ら(投稿中)の大学生用「共感的感情反応尺度」の項目を慎重に見直し,3回にわたって小学生(計155名)と中学生(計567名)に質問紙調査を実施し,新尺度の因子構造の検討を行った。その結果,中学生も大学生と同様,共感的感情反応は,ポジティブな感情に対する共感的感情反応(以下「ポジ共感」)因子と,ネガティブな感情に対する共感的感情反応の2つの因子,すなわち「ネガティブな感情の共有」(以下「ネガ共有」)および「ネガティブな感情への同情」(以下「ネガ同情」)因子とで構成されることが明らかとなった。次に,妬み,攻撃行動,向社会的行動との関連を検討した。その結果,ポジ共感は,外顕性攻撃とは負の,向社会的行動とは正の相関を有することが示された。また,ネガ共有は,妬みと正の相関を有するが,外顕性攻撃とは負の,向社会的行動とは正の相関を有し,同様に,ネガ同情は,妬みと正の相関を有するが,向社会的行動とは正の相関を有することが示された。次に,中学校の担任教師に,ポジディブな共感的感情反応とネガティブ共感的感情反応とについて,それらが最も顕著である生徒をクラスの中から6名名ずつを挙げてもらい,共感的感情反応尺度の妥当性の検討が行った。その他には,2年目以降の介入研究に向け,構成的グループエンカウンター研修やソーシャルスキルトレーニングに参加した。これらの成果に基づき,2年目は引き続き質問紙調査を実施するとともに介入プログラムの策定を行う。なお,今年度の研究成果は,日本教育心理学会第52回総会における自主シンポジウムおよび第27回国際応用心理学会(メルボルン)で発表する予定である。
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