2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本陸軍における戦争神経症-国府台陸軍病院『病床日誌』の研究-
Project/Area Number |
21530715
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
細渕 富夫 埼玉大学, 教育学部, 教授 (10199507)
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Keywords | 日本陸軍 / 戦争神経症 / PTSD / トラウマ |
Research Abstract |
本研究は、アジア・太平洋戦争期の日本陸軍兵士に発症した戦争神経症(当時は「戦時神経症」と呼んでいた)の実態について、当時の精神・神経疾患兵士の基幹病院として位置づけられていた千葉県・国府台陸軍病院の『病床日誌』(現在は下総療養所で所蔵)の分析から明らかにしようとする研究の一環として取り組んだものである。 (1)戦争神経症に関する関連資料の収集及び関連研究の分析・考察 日本国内にある戦争記念館、戦災資料館、平和資料館等に所蔵されている戦争神経症関連資料を閲覧・収集した。今年度は沖縄県の対馬丸記念館にて生存者の証言資料を閲覧するとともに、那覇市歴史博物館にて戦時中の兵士の写真資料を閲覧した。 (2)『病床日誌』の復刻版作成のための症例分析 すでに「臓躁病」関連疾患(ヒステリー)については復刻作業を終えているため、今年度は神経症関連疾患の症例についての読み込みを進めた。全部で段ボール箱20箱分の病床日誌が残されている。神経症としてまとめたのは浅井利男氏であるが、綴じ込まれている日誌の診断名は多様である。まだ全体像は把握できていないが、発症にいたる決定的な要因が特定できない症例が多い。もとより兵士は統合失調症の好発年齢にいるため、その鑑別診断の精度が問題となる。しかし、少数例であるが、極度に生活音におびえ、布団をかぶってしまい問診に応じない兵士、夜中に歩き回り、窓から飛び降り奇声をあげるなどの行動が顕著な兵士がいる。こうした症例も含め、全症例について個人情報保護に配慮しつつ、データベース化にむけた作業を行った。
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