2011 Fiscal Year Annual Research Report
セルフ・コントロールにおける社会的随伴性の役割:他者の存在を活用した行動自己制御
Project/Area Number |
21530748
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
杉若 弘子 同志社大学, 心理学部, 教授 (90257171)
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Keywords | セルフ・コントロール / 社会的随伴性 / 行動産物 / 公示 / 自己記録 / ABデザイン / 運動の継続 |
Research Abstract |
社会的随伴性の影響を考慮した行動の自己制御という視点から、セルフ・コントロールにおいて他者の存在が果たす役割について検討した。今年度は、ストレッチ運動の継続を標的として、行動遂行の自己記録のみを実施する自己完結的な方略と行動産物の公示(public self-graphing)を併用する他者介在型の方略の効果を比較検討した。 大学生10名を対象に、自己記録のみを実施するA条件と自己記録と行動産物の公示を併用するB条件を被験者内に配置するABデザインを用いて実験行った。一人あたりの実験期間は、両条件ともに4週間ずつの計8週間であった。介入期となるA条件とB条件では、1週間おきに各4回ずつ(計8回)記録の確認と柔軟性の測定を行った。B条件では、ベースラインと比した柔軟性の伸び率を算出し、個別にB4サイズ用紙に折れ線グラフで示したものを10名分同時に大学内の人目につきやすい2カ所に掲示した。 結果は次の通りである。まず、自己記録をもとに各条件におけるストレッチ運動の実行日数を比較したところ、10名中8名で自己記録のみのA条件よりも公示を併用したB条件での実行日数が多く、残りの2名は両条件で同日数であった。運動に従事した時間でみると、1回あたりの取り組み時間に有意差はないものの、運動に従事したのべ時間(分)の平均はA条件(M=351.2)よりもB条件(M=457.9)で有意に長く、10名中8名でB条件の方が長かった。1回あたりの取り組み時間に変化はないものの、実行日数とのべ取り組み時間が増加したことから、行動産物の公示はストレッチ運動への取り組み頻度を高める効果をもつことが明らかになった。また、柔軟性の増加率においても、B条件ではA条件よりも伸びの大きい被験者が多かった。以上より、本研究では、行動遂行の自己記録と行動産物のフィードバックといった自己完結型の方略以上に、行動産物の公示を併用する他者介在型の方略が有効であることが明らかになった。
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