Research Abstract |
トップダウン的な制御に関する機構が,左右半球に独立して存在するかを明らかにするために,フランカー刺激文字列(ターゲットと周辺のフランカー刺激)を左右各半球に投入して,コンフリクト(不一致試行)の出現確率を各半球で操作した。これまで,一致試行が多い場合,つまりコンフリクトが少ないブロックの場合には,適合性効果(不一致試行の成績-一致試行の成績)が,コンフリクトの多いブロックよりも大きくなるという,競合適応効果が観察されている。もしこれが各半球で行われるとすれば,左右視野で一致試行の出現確率(コンフリクトの多寡)が操作されればそれに応じた視野間の競合適応が予測された。実験1では仮説をおおむね支持する結果が得られた。 実験2では,実験1での結論を確認するために,左右両半球に冗長に文字列が導入されるような布置,つまり上下視野に刺激を呈示し,実験1同様に一致試行の出現確率を視野毎に操作した。その結果,予想に反して,上下視野においても視野間競合適応効果がみられた。おもしろいことにこの効果は,試行が進む実験後半に顕著にみられた。この点については次年度の研究課題となった。 今年度のもう1つの成果は,競合適応効果の生起には,競合経験自体が重要であることが示唆された点であった。先の実験1と同様の実験を数字列(例"44644")を用いて,呈示位置ごとに一致試行の出現確率を操作した。予想通り競合適応効果が観察された。その直後の実験後半では,一致試行の出現確率を50%に変更すると共に,漢数字のフランカー刺激(四四六四四)にかえて適合性効果を観察した。その結果,一致試行の出現確率が50%に変更したにも関わらず,先の視野間競合適応効果は観察された。このことは,競合経験に依存した認知的制御が,刺激の違いを超えても保持されることを示唆した。
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