2011 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける子育て支援と成人教育の地域的統合を支えるワーカー職の研究
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21530852
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
矢口 悦子 東洋大学, 文学部, 教授 (20331449)
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Keywords | 成人教育 / 子育て支援 / シュア・スタート / 成人教育関連ワーカー / 子どもセンター / 生涯職能開発 / 生涯学習 |
Research Abstract |
最終年度となる本年度は、これまでの調査によって得られた情報を分析・整理し、その結果を報告書にまとめ公表することを目的としていた。年度の初めは、東日本大震災の影響で、平成22年度に実施した現地調査のテープ起こし作業が2カ月近く遅れてしまったが、その間に入手した資料の整理と分析を進めたために、研究全体としては後れを取り戻し、予定通りに進めることができた。研究成果としては、10年に及ぶイギリスの国家的なプロジェクトであったシュア・スタート事業の全容を把握し、3段階の展開に沿ってとらえることができた。その全体像を踏まえて、平成21年度、22年度に訪問したイングランド8か所の子どもセンターについて、それぞれの地域特性及び行政の仕組みによって異なる運営方式と活動の実態とを把握することができた。 続いて、ロンドン大学に設置されたシュア・スタート全国評価機構の代表に話を聞き、さらにそのチームメンバーである研究者からもヒアリングすることで、地域をベースにしたプロジェクトを全国的に展開するうえで、研究調査を担う大学等の研究機関の役割を、全体の中に位置づけることができた。つまり、国及び地方レベルでの政策遂行の安定性を維持することができ、事業展開における基礎的な方法、実践の評価のための指標などをリアルタイムで広報し続けることで、各地の実践を側面から支援する役割が認められた。そして、各種調査結果を電子媒体及び刊行物として公開することを通じて、当該実践関係者のみならず関心を寄せる内外の研究者や実践家の利用に役立つのである。研究期間としての大学の果たす実践的な役割をここに認めることができた。 以上のような背景研究を進めたうえで、インタビュー調査を実施した8センターのリーダー、アンケートに回答を寄せてくれた30名以上のワーカー職の持つ資格に関する詳細な分析を行うことができた。資格とその取得先がわかったことで、その養成に貢献している伝統的大学と旧ポリテクであった新しい大学の役割を知り、カリキュラムなどについての情報や資料も得ることができた。そして、アンケートやヒアリング調査により、入職後のいわば生涯にわたる職能開発という国家的な、さらにはEU圏における動向のなかで、ワーカー職の養成と研修を抑える必要性を見出し、位置づけを試みた。以上のような研究調査によって得られた情報と知見を整理し、156ページからなる「成果報告書」として刊行し、社会教育・生涯学習関連研究者等に送付した。こうした研究成果の公表によって、まずは非常に複雑であった複合的な施設における成人教育関連ワーカー職の最新の実態を紹介できたことと、日本における社会教育・生涯学習領域の成人教育に関連するワーカーの資格について、今後学会や政府が検討を重ねていくための基礎資料を公開することができたと考える。
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Research Products
(2 results)