2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国西南少数民族の成人儀礼の社会化機能に関する比較教育学的研究
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21530886
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
金 龍哲 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (20274029)
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Keywords | 通過儀礼 / 成年儀礼 / 社会化 / 中国西南の少数民族 / 人間発達 / チベット族 / ジノー族 / ミャオ族 |
Research Abstract |
中国西南少数民族の成年儀礼に関する調査は以下の二段階に分けて進められた。 (1)チベット族、バサ・ミャオ族の成人式に関する調査(8月31日-9月18日)先ず、チベット族の成人式が地域によって大きな差異がみられる現状に鑑み、四川省の丹巴県、チベットの林芝、ラサ、そして青海省貴徳県の四地域を対象として調査を進めた。その結果、チベット自治区においては成年儀礼が現在ほぼ消失の状態であるが、丹巴県と青海省の貴徳県においては特に女子を対象とした成年儀礼がまだ行われていることが確認できた。丹巴県チベット族の成人式については実際に成人式を体験した女性を対象にインタビュー調査を実施し、青海省貴徳県のチベット族の成人式は2009年度長女の成人式を挙行した家庭を訪問して実態調査を行った。 バサ・ミャオ族の成人式は貴州省の〓沙苗案で行われた男子の断髪式を主な内容とした成年儀礼を参与観察し、家庭訪問、村の長老を対象としたインタビュー調査を実施したが、文献に記述されている男子の成人式は現在ほとんどか男子の断髪式に特化され、観光開発のイベントとしてしか機能しない実態が明らかになった。 (2)ジノー族とラオスとの国境に居住するミャオ族の成人式に関する調査(12月28日-1月9日)ジノー族の成人式は、男女の未婚青年の組織が学校の普及、青年団組織の浸透、若者の出稼ぎによる都市への進出等で崩壊の一途をたどり、機能していないことが確認された。ラオス国鏡近くの苗寨におけるミャオ族の成人式については、長女の成人式を行ったばかりの家庭を訪問し、成人をめぐる考え方、儀式の過程と特徴、成年儀礼をめぐる村の動向等について調査を行った。上記の四つのケースは中国西南少数民族の成年儀礼の在り方を類型化するための典型的な事例として位置付けることが出来ると考えられる。
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