2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国西南少数民族の成人儀礼の社会化機能に関する比較教育学的研究
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21530886
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
金 龍哲 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (20274029)
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Keywords | 通過儀礼 / 成年儀礼 / 社会化 / 中国西南の少数民族 / 人間発達 / 文化表象 / ジノー族 / ミャオ族 |
Research Abstract |
23年度の現地調査は次の二回に分けて進められた。 一回目の調査(平成23年8月2日-8月29日)は、チベット族、イ族、プミ族の成年儀礼を中心に行った。チベット族の成年儀礼は、青海省貴徳県河東郷と四川省丹巴県の事例では実施状況の面で地域差が大きく、また民族文化の表象装置として機能する特徴がみられた。イ族の場合、四川の涼山の農村の一部、そして雲南省の寧浪県などの一部の農村地域において女子を対象とした儀式が残っているが、都市部ではほぼ姿を消していることが明らかになった。一方、雲南省のプミ族のケースでは、木底青村や温泉村などを中心に、昔ながらの成年儀礼が完全な形で残っており、人々の意識においても最も重要な伝統文化として位置づけられ、子どもを大人にする儀式として機能していることが分かった。モソ人とそれと同様、西南地域で保存状態が最も良好で、実際に機能している通過儀礼とみることが出来る。 二回目の調査(平成24年1月23日-2月2日)は、ミャオ族とジノー族を主な対象として実施した。 雲南省の最南端、ラオス国境近くに位置する龍潭村に三日間滞在し、ミャオ族女子の成年儀礼を中心に、ミャオ族の伝統的な子育ての慣習、家庭教育と家族の在り方等についてインタビューを実施した。また、村で行われる春節行事(若者の集会、舞踏会、羽根突…)についても参与観察を行った。ジノー族の居住地である基諾郷においては、巴奪村、巴亜寨の長老や民間芸人を対象にインタビュー実施し、ジノー族の伝統的な成年儀礼が50年代以降消失した原因について予備調査を行った。ジノー族の成年儀礼の消失は、担い手であった未婚青年の組織-「ローコ」「ミーコ」が、青年団などの組織にとって換えられたことを原因ではないか、という仮説を立て、次年度の調査を実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初あげたチベット族、イ族、プミ族、ヤオ族、ミャオ族、モソ人、ジノー族など、七民族を対象とした成年儀礼の調査は、ほぼ計画通りに現地入りを果たし、参与観察、インタビューの方法を用いて調査を進めることが出来、また関連資料の収集もほぼ完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる本年度においては、8月と9月にいくつかの補充調査を実施する。主に、(1)四川省丹巴県の山奥のチベット族の成年儀礼の実態調査、(2)貴州省の縦江県のミャオ族の男子の成年儀礼の調査、(3)ジノー族の伝統的な成年儀礼が50年代以降消失したのは、その担い手であった未婚青年の組織-「ローコ」「ミーコ」が青年団、婦女連合会、民兵などの組織にとって換えられたことに起因するのではないかという仮説を検証する。
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