Research Abstract |
入院児への効果的な教育的介入モデルを提案することをめざし,23年度は3つの研究活動を行い,研究のまとめ作業へと移行した。 第1に,病弱教育担当教員を対象とする学校横断的な事例検討会を開催した。本年度は定期研究会メンバー内に限定して試行した。事後アンケートの結果,メンバー間のラポールが確立していることが安心感につながり意見を出しやすいという利点がある反面,得られた実践知が広がりにくいという欠点も明らかになり,広くメンバーを募る形式のほうが好ましいことが示された。 第2に,あるひとつの院内学級において現場教員と共に定期的に事例検討を進めた。前年度までの「教育実践の中で気になっていること」を語り合うにとどまらず,移植のため無菌室に入る児童生徒に対する対応について,経験のある教員から初めて担当する教員への実践知伝達の場としても機能しており,事例検討会という時間枠を設定することが実践上の課題の共有と解決に向けた知識伝達のために有効であることが示された。 第3に、院内学級における授業づくりをテーマとする校内研究指導に携わる中で,情報収集・研究討議を行った。病弱教育においては,どのように意欲を引きだすかは大きな課題であるが,意欲をひきだす授業づくりのためには,正確なアセスメントの必要性が確認され,また,入院・転入時期,治療・指導期,退院・転出期の3つの時期に分けて,指導の重点,目標,配慮事項を考慮した指導計画を作成することの有効性が示された。従来,入院児への教育的介入については,心理的支援について検討されることが多かったが,「授業づくり」研究を推進し,知見を蓄積することは極めて重要な意味をもつと考えられる。 事例検討会の意義や効果については2度の学会発表として発表してきたが,本研究課題の最終的なまとめとしての教育的介入モデルは,現在執筆中の論文において発表予定である。
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