2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540361
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
花咲 徳亮 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70292761)
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Keywords | 巨大磁気抵抗 / フタロシアニン / 電荷不均一性 |
Research Abstract |
フタロシアニン分子から構成される伝導体は、電気伝導を担うパイ電子系と、局在スピン源となるd電子系と相関効果が期待される物質系である。実際、磁場の印加によって電気抵抗が減少する、巨大磁気抵抗効果が観測されている。このメカニズムを解明する上で、本物質系の微視的状態を明らかにする事は重要である。これまでのX線回折で波数4K_Fの散漫散乱が観測されていたが、この散漫散乱の可能性の一つとして電子間クーロン反発で分子電荷の濃淡が2倍周期で並んだ電荷秩序状態が考えられる。そこで、磁場効果を調べるため、強磁場下(10テスラ)で高精度X線回折測定を行った。その結果、散漫散乱強度が磁場印加で弱くなる事を見出した。これより、電荷秩序の磁場誘起融解が巨大磁気抵抗の原因である事を明らかになった。d電子由来の局在スピンとの分子内相互作用で、伝導電子も僅かにスピン偏極する。もし局在スピンが反強磁性的な短距離秩序を有れば、電荷秩序も局所的に安定化される。ここに、磁場を印加すれば反強磁性的秩序の揺らぎを抑制されるので、電荷秩序のゆらぎも抑制される事になる。研究対象のフタロシアニン分子系伝導体は、伝導の1次元性が強いために、電荷秩序のゆらぎに対しても電気抵抗が敏感に変化する事が考えられ、秩序の揺らぎを磁場で制御して巨大応答を引き出していた事になる。 本研究は巨大磁気抵抗が重要な研究課題であるが、f電子を含む金属間化合物SmNiC_2においても、電気抵抗が1桁減少する巨大磁気抵抗を観測していた。従来のランタノイド系の金属間化合物の磁気抵抗比|△ρ(B)/ρ(0)|が40%程度であったので、RNiC_2は特徴的な物質群である。この巨大磁気抵抗の原因を調べるために強磁場下X線回折の測定を行なったが、電荷密度波が磁場印加によって抑制される事を実験的に明らかにした。この結果は論文発表した。
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Research Products
(18 results)