Research Abstract |
本年度も1.カチオン性サリチルアルデヒドシッフ塩基複核金属錯体、2.フェナントロリンなどの複素芳香環アミン誘導体をインターカレータとする複合金属錯体,3.プロテインスプライシング反応による機能性錯体修飾DNAコンジュゲートの合成と機能評価を行った.1.についてはカルボキシヒドラジド架橋配位子による複核銅(II)錯体(a)とカチオン部位を1-メチル-2-フォルミル-3-ヒドロキシルピリジンに置き換えた複核銅(II)錯体(b)を合成し,架橋部位の親水性の増加やカチオン側鎖の形状がDNAとの相互作用にどのような影響を及ぼすかを検討した.(a)は結合親和性,酸化的切断活性ともに1,3-ジアミノ-2-プロパノール架橋錯体(c)に比べて低下した.一方,(b)は(c)よりもやや高い親和性とほぼ同じ切断活性を示した.現在,配位子の修飾による立体構造と酸化還元電位の変化について検討を行っている.2.については,複合配位子のカチオン側鎖を除いた錯体を合成し,カチオン性側鎖の効果を検証した.その結果,DNAとの結合親和性は低下するが,過酸化水素による酸化的切断活性はあまり減少せず,現在反応条件についてさらに検討を行っている,3.については鋳型特異的にルテニウム-白金二核錯体を脱離するDNAプローブの合成を試み,成功した.SNPs解析を行った結果,標的DNAの一塩基の違いに応じて二核錯体が形成され,サンプル量が5.0pmolでも判別可能であることが分かった.今後,反応条件の最適化を行っていくことで,より高い検出感度の実現が可能であると考えられる.また,本年度は新たにビスピコリルアミン銅(II)および亜鉛(II)錯体をsalen型シッフ塩基銅(II)錯体で架橋した三核錯体を合成し,中心金属の共同効果による効率的なDNA二本鎖切断試薬の開発も試みた.その結果,シッフ塩基架橋部位が複素環アミンの銅(II)三核錯体がen架橋錯体に比べて,二本鎖切断機能が著しく向上することを見出した.今後,これらの錯体の生理活性について検証する予定である.
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