2009 Fiscal Year Annual Research Report
リチウムイオン電池用黒鉛負極の表面被覆による高性能化とその電極反応機構の解析
Project/Area Number |
21550169
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
宇井 幸一 Iwate University, 工学研究科, 准教授 (60360161)
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Keywords | 電池 / 負極 / 黒鉛 / ポリアクリル酸 |
Research Abstract |
本年度は、ポリアクリル酸(PAA)を被覆した天然黒鉛負極における被膜生成メカニズムの基礎的知見を得るため、炭酸エチレン(EC)を主溶媒とした電解液を用い、初回充電時の各電位における黒鉛電極の表面状態の変化を解析した。また、バインダーが被膜生成に及ぼす影響を調べるため、現行のバインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を比較のため用いた。 初回サイクルにて、PVdFバインダー電極は放電容量348mAh g^<-1>及び充放電効率75.7%、PAAバインダー電極は放電容量356mAh g^<-1>及び充放電効率82.7%を示した。窒素吸着測定の結果より、試験前のPAAバインダー電極のB.E.T比表面積の方が小さかったので、PAAが効果的に被覆していると考えられた。X線光電子分光の結果、0.8V(vs.Li/Li^+)まで充電した電極表面は、バインダーに関わらず被膜に覆われており、主成分は無機成分のLi_2CO_3及びLiCl、有機成分のアルキルリチウムカーボネート、即ち、従来提案されているECの還元分解生成物に同定された。しかし、PAAバインダー電極の場合、PVdFとは逆に、無機成分の割合が小さかった。また、0.8Vまでの充電容量はPAAバインダー電極の方が小さいので、0.8Vよりも貴な電位では、主に無機成分が生成することを考慮すると、充放電特性及び表面分析の結果は合致した。0.8Vにおける交流インピーダンス測定の結果も前述の考察を支持するものであった。被膜形成がほぼ終了する0.2Vでも、PAAバインダー電極の被膜抵抗の方が小さかった。これらの結果は、被膜中で絶縁性の無機成分が少ないことが一因と考えられる。 よって、電極作製の段階でPAAが黒鉛のエッジ面を効果的に被覆したことで、0.8Vよりも貴な電位にてEC成分の還元分解を抑制し、電極特性の改善に寄与したと考察した。
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Research Products
(2 results)