2011 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域誘電分光法による生物細胞膜の損傷と修復のモニター
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21560447
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅見 耕司 京都大学, 化学研究所, 准教授 (90127936)
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Keywords | 細胞膜 / 誘電分光 / 細胞 / 界面分極 / 誘電緩和 / 赤血球 / 溶血 |
Research Abstract |
昨年度までの研究で測定が可能となった赤血球ゴーストの低周波誘電分散の性質について、今年度も引き続き詳細な検討を行った。すなわち、測定用セルのデザイン、測定方法の妥当性と再現性の検討、理論計算と測定結果のより精密な比較、などを行った。この測定法の検討と実験結果の解析について、二つの論文にまとめた。これらの論文では、(1)低周波誘電測定で問題となる電極分極現象を減少させるための測定セル設計の工夫と測定例を述べ、また(2)赤血球ゴーストの低周波誘電分散は、細胞膜に数十ナノメータの穴が一つ開くとこによって生じることを、実験と理論計算から明らかにした。その後、当初予定していた、赤血球ゴーストの穴の直接観測を試みたが、現在のところ光学顕微鏡、原子間力顕微鏡では観測に成功してない。また、赤血球と同様に、低浸透処理した培養細胞でも、膜に穴が形成され、低周波の誘電分散が観測できるのかどうかについて検討した。現在のところ、赤血球ゴーストの低周波誘電分散に相当する誘電分散は観測できていない。このことは、赤血球膜に特有の膜タンパク(band-3)の凝集が穴の形成に関与するとする説を採ると説明できる。すなわち、赤血球以外の細胞では穴が安定化されないため、低周波誘電分散の観測ができなかったものと思われる。さらに、細胞膜に穴を開ける方法として、界面活性剤を試みたが、低周波誘電分散は観測できていない。
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