Research Abstract |
本年度は,ポリマー/気相成長炭素繊維(VGCF)系複合体融液の流動現象に対する既存の粘弾性モデルによる流動計算技術の適用性・可能性・限界を吟味することを主たる目的として,溶融混練で作製した複合体について,複合体融液のダイスウェル現象を中心とした検討を行った。得られた成果を以下にまとめる。(1)ポリカーボネート/VGCF系複合体は,引張特性が母材の溶融粘度に依存すること,アスペクト比の大きい気相成長炭素繊維を加えると,熱伝導率が効果的に大きくなることがわかった。(2)ポリエチレン/VGCF複合体融液のダイスウェル現象を測定した。複合体融液の周波数分散によるせん断流動特性は,VGCF含有量が高々5wt%と少ないこともあり,VGCFの添加による大きな変化はなかった。しかし,同じ流量における複合体融液のスウェル比(押出物の直径とノズルの直径との比)は,VGCFの含有率を増加させると減少した。また,複合体中のVGCF含有率を上げると,メルトフラクチャーを起こしにくくなることがわかり,少量のVGCFの添加によりせん断流動特性を大きく変化させることなく,材料のメルトフラクチャーの発生を抑えられる可能性が示唆された。(3)上記(2)の結果および既往の研究の知見から,複合体融液の流動特性は,VGCFの添加により,せん断流動特性は大きく変化しないが,伸長流動特性が大きく変化するのではないかという考えを立てた。そこで,複数の粘弾性モデルからこの考えに合うモデルを吟味した結果,PTTモデルが有用と判断し,PTTモデルによる複合体融液のダイスウェルシミュレーションを行った。その結果,定性的ではあるが,実験結果と一致する複合体融液のダイスウェル現象を計算で捉えることができた。今後は,今回用いた考えの妥当性の検証が必要がある。
|