Research Abstract |
細胞集団に自発的な協調運動を誘引させるため,コラーゲンゲルを作成し,その上に上皮細胞(MDCK細胞)を培養した.平成22年度では,細胞外基質との接着構造を解析し,リーダー細胞の出現機構について調べた.さらに,細胞間に「力」を伝達するセンサーの探索を行った. (1)細胞-基質間の接着構造の解析 これまでの実験結果によって,軟らかいゲル基質上においては,リーダー細胞のみが基質との接着部位にintegrin-β1を発現し,リーダー細胞以外の細胞は別の接着タンパク質を発現していることが示唆されていた.平成22年度では,RT-PCRにより,リーダー細胞以外の細胞における接着構造の解明を目指した.しかし,integrin-β3,β4,β7など幾つか候補が見つかったものの,接着タンパク質の同定には至らなかったので,次年度も継続して実験を行う予定である. (2)リーダー細胞の出現機構の解明 これまでの実験結果によって,基質の硬さに伴って上皮-間質転換(EMT)が誘引され,リーダー細胞が出現することが示唆されていた.平成22年度では,MDCK細胞のサブクローニングを行い,発現遺伝子と表現型を調べることでEMTを検証した.その結果,ガラス基盤上でも集団運動を示すサブクローンの獲得に成功した.そのサブクローンは細胞間接着が極めて強固であり,E-cadherinが有意に発現していることが明らかとなった.さらに,他のサブクローンに比べて,リーダー細胞の出現頻度が少ないという結果が得られた.これらのことから,EMTとリーダー細胞の出現との相関が明らかとなった.
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