2011 Fiscal Year Annual Research Report
三次元細胞モデルを使って上皮陥入機構を明らかにする
Project/Area Number |
21570234
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Research Institution | Hyogo University |
Principal Investigator |
本多 久夫 兵庫大学, 健康科学部, 教授 (10289118)
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Keywords | コンピュータ・シミュレーション / 3次元細胞モデル / 上皮陥入 / 気管 / 神経管 / チューブ |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ハエ初期胚の気管形成時にみられる上皮陥入の観察に基づき3次元細胞モデルを使って、上皮細胞にどのような性質があれば陥入が実現するかを調べた。シミュレーションにより立体的な陥入を行うことはできており、これの現実の観察結果との対応を詳しく調べている。これまで(1)角柱のアピカル面が底面に対して収縮または拡大すること、(2)細胞が胚内部に移動する動き、(3)アピカル面の辺のうち、中心に対して接線方向の辺が特に強く収縮し、アーク状構造を形成すること、および(4)陥入をはじめてから細胞が分裂することで陥入がさらに進む事を取り入れた。シミュレーション結果の細胞の形の変化を、定量的に検討したのだが、陥入そのものは(1)と(2)があれば十分で、(3)および(4)は気管形成の上皮陥入を特徴づけるものであるようだ。現在(2)の細胞の胚内部への動きがシミュレーションの仮定として真に必要かどうかを検討している。この動きを導入しないと細胞が中央に密に詰まって、細胞の多角形が平面でなくなり、計算がフリーズしてしまう。プログラムに使っているアルゴリズムの再検討、中央部の細胞の力学的性質の変化、ゆらぎの導入などを行っているが、いまのところ陥入に細胞の動きは必要である。 別の研究として、この上皮陥入にも働いている上皮細胞に重要な性質として、平面内細胞極性があるのだが、この性質の形態形成のおける意義を考察した。局所的相互作用のほかグローバルなコントロールが必要におもわれる思考実験を示した。 また、神経管形成時に上皮細胞は線状に並んだパターンを示すのだが、この形成機構を細胞モデルで説明した。 これらの研究の一部およびこれまでの研究をまとめたものの発表を以下に記す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元細胞モデルにより上皮陥入のコンピュータシミュレーションはできるようになった。具体的な観察結果との対応および必要以上の仮定をしていないかどうか(たとえば陥入する細胞が胚内部方向に動く)の検討に進んでいる。また目的のひとつに井戸型陥入と溝型陥入(神経管形成)の本質的な違いを究めることがあったが、これは3次元モデルと2次元モデルを適宜使って区別をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前項で述べた観察結果との対応は、気管の陥入だけでなく消化管の陥入、神経管の陥入などの知識ともからめて検討する。 また最近は細胞の分子生物学からの分子の知識(幾つかの単量体Gタンパク、アクチンの会合を制御する分子、平面内細胞極性に関する分子など)が急速に増えてきた。シミュレーション結果とこれら分子の機能との橋渡しを行う。 もうひとつの目的として、上皮シート間の融合を扱うことがある。これについては新たに別の細胞モデルを造るのがよいと考えておりこれについても進める。
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