2009 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷地帯におけるイネ低温順化反応性に関する育種学的研究
Project/Area Number |
21580001
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
大西 一光 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (50526704)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 芳雄 北海道大学, 農学研究院, 教授 (70109528)
|
Keywords | イネ / 低温抵抗性 / QTL / 遺伝資源 / 環境適応性 |
Research Abstract |
低温ストレスはイネの生育期間全般にわたり様々な傷害を引き起こし、栽培地域を制限する最大の要因の一つである。特に、世界の稲作の北限地帯の一つである北海道は、冷涼な気候と短い生育期間によって引き起こされる低温傷害が最大の制限要因となっていたが、19世紀後半から現在に至るまで絶え間ない育種努力と栽培技術の改良により、現在の稲作体系が確立された。栽培イネの北海道への適応は、近代育種以前の長い進化的な遺伝変異の蓄積と近代の人為的選抜や交雑育種により、わずか100年の間に達成されており、作物進化の歴史上極めて興味深い事例と考えられる。しかしながら、栽培イネの進化過程の中で、低温抵抗性の遺伝的変化がどのように北方適応や北海道品種群の成立に寄与したかについては不明な点が多い。本研究では、寒冷地帯におけるイネ低温適応機構の解明を目的として、これまで厳密に評価されてこなかった低温順化反応性に着目し、遺伝機構を明らかにするとともに、稲作北限地帯である北海道において適応的意義と新たな育種形質としての農業的価値を評価することを目的としている。 本年度は、栽培および野生イネ57系統に加え、多数の北海道系統を用いて、幼芽期および幼苗期における順化および無順化条件下での低温抵抗性に関して系統評価を行った。栽培イネに関しては、幼芽期と幼苗期ともに順化および無順化条件下で日本型-インド型間に明瞭な遺伝的分化が存在することを明らかにした。また野生イネに関しては、幼芽期と幼苗期ともに順化後の低温抵抗性に関して地理的クラインが存在し、順化反応性が適応性に関連することを明らかにした。無順化条件下での幼芽期低温抵抗性QTL、qCTP11に関しては大規模分離集団から組換え体を選抜し、QTL領域の絞り込みを進めた。さらに北海道品種の持つ低温適応性に関わるQTLをゲノム全域で検出するため、北海道在来品種A58と北海道品種と高い親和性を示すインド由来のインド型品種I-33(Surjamkhi)との交雑より組換え自殖系統(A58×I-33 RILs)を育成し、分子マーカーを利用してゲノム全域での連鎖地図の作成を進めた。
|