2011 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化に対応しうる無休眠性ナシ品種の育成とそれを用いた休眠の分子機構解明
Project/Area Number |
21580033
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田村 文男 鳥取大学, 農学部, 教授 (50217197)
|
Keywords | 温暖化 / 自発休眠 / 低温要求量 / 分子マーカー |
Research Abstract |
'おさ二十世紀'の自殖後代でS_4^<sm>遺伝子をホモで持つニホンナシ系統TH3,台湾在来ナシ横山,およびそれらの交雑によって得られたF_1系統群の萌芽率を調査した.F_1個体は,S遺伝子の判定とSSRマーカーによる親子鑑定の結果から,全個体がこの両親に由来する後代であると同定された.全調査日において横山の萌芽率は60%以上であり,11月下旬~1月上旬までの間に自発休眠に導入されなかった.一方,TH3の萌芽率は常に横山に比べて低く,その値は12月上旬から1月上旬にかけて徐々に上昇した.いずれの調査日ともに,F_1個体が示す萌芽率は横山とTH3の萌芽率の間に広く分布した.全9回の調査日のうち8回の調査日において,F_1個体の萌芽率の平均値は横山よりTH3の萌芽率に近い値を示した.そこで,TH3が自発休眠の深度に関する優性遺伝子をホモで持つと仮定してχ^2検定を行ったが,この仮定は棄却された.これらの結果から,低温要求量を決める遺伝要因にはQTLが存在すると考えられた.多くのF_1個体の落葉期は,TH3の落葉日に比べて横山の落葉日に近かった.一方,F_1個体の展葉期は,横山とTH3の展葉日のほぼ中間にあたる4月9日に集中していた. 一方、得られたF1,F2系統の中から低温要求の極めて少ない個体を選抜するとともに、高接ぎにより増殖し花芽着生や樹体成長、果実特性を調査し、成長特性を明らかにした。選抜された中で、No.72及びNo.74は低温要求量が300CU程度とこれまでのナシ栽培種にはない低さであり、また果実品質も果重が400g程度、糖度が13度程度で花芽の着生が良好であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
F1の低温要求量、S遺伝子型を明らかにするとともに、遺伝分析を行い、低温要求量を決める遺伝要因にはQTLが存在することを明らかにした。また、それらの果実品質も調査されており、遺伝資源としての評価ができており、予定通り順調に研究が進展しているものとみなされる。
|
Strategy for Future Research Activity |
F1及びF2の遺伝資源評価が完了したので、これらと親品種を用い、遺伝子発現を調査し、休眠に関与する遺伝子を特定する。
|