Research Abstract |
本研究は超音波医療診断と同様の方法により,高周波超音波を用いて生鮮魚介類め体内を観察し,生体組織の音響学的特性の差異を利用して,生体内部の異物の検出,寄生虫や魚病の発見,鮮度や品質の判定,魚卵や肝臓の識別など,食品として珍重される付加価値部位の大きさや成熟度を非破壊計測する方法を開発することを目的としたものである。従来型の超音波診断装置(3MHz,5MHz)でスケソウダラ,マダラ,サケ,チョウザメ等の体内を観察したところ,雄と雌の生殖腺画像に明確な差異が認められ,さらに雌の卵巣の観察では,卵粒径を推定することができた。生殖腺画像は周波数が高いほど,方位分解能が高いほど鮮明であり,容易に識別が可能であった。生体組織からの超音波散乱の強弱は対象部位と周囲組織の密度と音速の積である特性音響インピーダンスで特徴付けられるので,組織の密度と生体音速の測定を行なったところ,卵巣は体組織に比べて密度が0.96倍,音速は0.98倍,特性音響インピーダンスは0.94倍でその音響反射率は約-30dBであることがわかった。これらの音響的特長を検討した結果,当該魚類の精巣内部および卵巣内部の非線形性音響反射特性が関与していることが示唆されたので,受信波の高次高調波成分による測定を検討するため,短パルス,広帯域の超音波パルスの発生が可能な送信器と受信波の周波数スペクトルが解析可能な実験装置を製作し,擬似標本(ファントム)を用いて,装置の性能を調べた。
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