Research Abstract |
ニゴロブナ仔稚魚が水田の微小動物群集に及ぼす影響を明らかにした。稲藁施用の方法が異なる(秋施用,春施用,無施用)水田区画を2つずつ用意し,一方に3日齢のニゴロブナ仔魚を放流し(放流区),もう一方は放流せずに(対照区),微小動物群集の動態を比較した。ニゴロブナは仔魚期にはミジンコを選択的に捕食していたが,後期稚魚期にはユスリカ幼虫を選択するようになった。放流区ではミジンコ目がほとんど見られなくなり,カイミジンコ目も対照区より少なくなった。一方,ミドリムシ目,ハルテリア目など小型の原生動物は,放流区でより多くなった。この結果は,ニゴロブナ仔稚魚→ミジンコ→原生動物というトップダウン栄養カスケードの存在を示唆する。また,稲藁施用をした水田では無施用の水田よりもタマミジンコMoinaの発生が多くなる傾向が見られた。 上記研究と同じ実験水田で,3日ごとに放流したフナを採集するとともに,水棲昆虫と微小甲殻類を定量的に採集し,また6日ごとにクロロフィルa量をサイズ分画ごとに測定した。2010年3月までに,6区画中4区画の微小甲殻類を定量し,クロロフィルa量の測定を完了した。対照区,放流区ともに,Moinaは仔魚放流直後に急増し,まもなく激減した。その後,対照区ではMoinaが再び増加し,その後優占種はミジンコDaphniaやケブカミジンコMacrothrixに置き換わっていった。一方,放流区ではミジンコの回復は見られなかった。クロロフィルa量は放流区でより多くなり,その傾向はミジンコに捕食され易い小サイズ分画でより顕著だったことから,ニゴロブナ仔稚魚→ミジンコ→微細藻類というトップダウン栄養カスケードの存在が示唆される。また,クロロフィルa量が全体としても増加したことから,稚魚が底泥中のユスリカなどを捕食したことよる,微細藻類の(再)懸濁あるいは栄養塩のくみ上げによる間接ボトムアップ効果も示唆される。
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