2010 Fiscal Year Annual Research Report
水田におけるニゴロブナ仔稚魚の成長と微小生物群集との相互作用の解明
Project/Area Number |
21580243
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
大塚 泰介 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (60344347)
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Keywords | ニゴロブナ / ミジンコ / 原生動物 / 植物プランクトン / 水田 / 稲藁施用 / トップダウン栄養カスケード / 間接ボトムアップ |
Research Abstract |
安土町(現・近江八幡市)大中の滋賀県農業技術振興センターで2009年に行った実験のデータがほぼ出そろった。この実験では水田内に6つの区画を設け、うち3つに卵黄吸収直後(4日齢)のニゴロブナ仔魚を放流し、残る3つを対照区として、フナ仔稚魚の主な餌である微小節足動物の消長と、フナ仔稚魚の成長パターンを調べた。 ミジンコ類で最も多く出現したタマミジンコMoinaは、田植えから約1週間後(仔魚放流直後)に対照区、放流区ともに急増し、まもなく激減した。その後,対照区ではMoinaが再び増加し,その後優占種はミジンコDaphniaやケブカミジンコMacrothrixに置き換わっていった。一方,放流区ではミジンコの回復は見られなかった。カイミジンコ類ではIliocyprisが最も多く見られた。本属はフナが仔魚段階では放流区・対照区ともにほぼ同様の増加を示したが、フナが稚魚段階に達すると放流区の方が明らかに少なくなった。ソコミジンコ目も田植え2週間後くらいから増加したが、フナ放流区では中干しまでに減少して採集されなくなった。キクロプス目およびユスリカ科幼虫の消長に対するフナ放流の影響は小さかったが、中干し直前にはともに放流区でより少なくなった。 ニゴロブナの成長パターンをさまざまな方法でスムージングしたところ、有効積算温度を横軸にとったロバストLOWESS回帰で良い結果が得られた。3つの放流区でいずれも稚魚への変態前後に成長が鈍り、稚魚の形態が完成して底生動物を捕食できるようになると再び成長速度が大きくなる傾向が認められた。 上記の結果に基づき、今後は仔魚期および稚魚期それぞれの成長速度を、微小節足動物の密度で説明するモデルの構築を試みる。
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