2011 Fiscal Year Annual Research Report
水田におけるニゴロブナ仔稚魚の成長と微小生物群集との相互作用の解明
Project/Area Number |
21580243
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
大塚 泰介 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (60344347)
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Keywords | ニゴロブナ / タマミジンコ / ユスリカ / von Bertalanffyの成長式 / 水田 / 初期成長 / トップダウン栄養カスケード / 間接ボトムアップ |
Research Abstract |
安土町(現・近江八幡市)大中の滋賀県農業技術振興センターで2009年に行った実験のデータを分析した。この実験では水田内に6つの区画を設け、うち3つに4日齢のニゴロブナ仔魚を放流し、残る3つを対照区として、フナ仔稚魚の主な餌である微小節足動物の消長と、フナ仔稚魚の成長パターンを調べた。 成長ゼロ点を5℃と仮定した有効積算温度を横軸にとり、ニゴロブナの全長、標準体長および体重の成長パターンをさまざまな方法でスムージングしたところ、ロバストLOWESS回帰で良い結果が得られた。3つの放流区でいずれも、全長および標準体長はほぼ直線的に増加した。von Bertalanffyの成長式(微分方程式表記)において、異化速度の項を無視すると、体長に関して直線的な成長曲線が得られる。すなわち、ニゴロブナの同化速度が概ね体長の二乗に比例するというVon Bertalanffy成長式の仮定が妥当なものである限りにおいて、本実験におけるニゴロブナの異化速度は同化速度に対して十分に小さく、また餌の手に入りやすさが成長段階を通じてあまり変化しなかったことになる。本研究におけるニゴロブナの成長パターンは、金尾ら(2009)が滋賀県内の他の水田で報告した、稚魚期の後半に成長が著しく鈍る成長パターンとは好対照をなした。本研究ではユスリカ幼虫が実験終了まで豊富に生息していたために、餌不足が生じなかったものと考えられる。ただし詳細に見ると、稚魚への変態直前にMoinaがほぼ全滅すると成長の遅滞が認められ、稚魚になって底生動物を捕食できるようになると再び成長速度が大きくなる傾向が認められた。 なお、全長に関する成長曲線が直線的になる傾向は、他の水田で2010年に調査を行ったダルマガエル幼生でも認められたため、水田で速い初期成長を示す脊椎動物に共通した傾向の可能性がある。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Cascading effects of larval Crucian carp introduction on phytoplankton and microbial communities in a paddy field : top-down and bottom-up controls2011
Author(s)
Nishimura, Y., Ohtsuka, T., Yoshiyama, K., Nakai, D., Shibahara, F., Maehata, M.
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Journal Title
Ecological Research
Volume: 26
Pages: 615-626
DOI
Peer Reviewed
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